カルティエは1933年、ジャンヌ・トゥーサンという女性を初代クリエイティブディレクターに迎え入れた。創造性と意思ある女性をブランドの中心に据えるという、明確なビジョンの表れだ。以来、女性を応援することはカルティエの本質であり、今もDNAとして脈々と息づいている。その精神を引き継いで生み出されたのが、2006年にスタートした「Cartier Women's Initiative(CWI)」だ。世界中の女性起業家を対象に、賞金、リーダーシップ研修、INSEADによる教育、そして500名を超えるフェローとのグローバルネットワークなど、ライフタイムでの支援を提供するこのプログラムは、社会を変える力を持つ女性たちを支える仕組みである。
にもかかわらず、日本からの応募者は未だに少ない。少しでも多くの日本人女性がこの機会を知り、挑戦し、世界へ羽ばたいてほしい。その思いから、CWIを紹介するイベントのモデレーターとして関わり、そしてこの記事を書いている。当コラム記事ではそのイベントの様子をお届けする。日本からの次なる挑戦者の背中をそっと押す存在となる記事になれることを願っている。
2025年3月、有楽町にあるTokyo Innovation Baseにて、EmpowerHer Weekの一環として開催されたトークセッション「カルティエ・ウーマンズ・イニシアチブ インスピレーショントーク- 世界へ挑む女性起業家へ -」。本セッションは、より多くの日本の女性起業家がCartier Women's Initiative(CWI)に参加することを目的に企画されたものである。
CWIとは何か。なぜカルティエは20年近くにわたり女性起業家支援を続けているのか。
こうした問いに対し、株式会社Zebras and Company代表の田淵良敬氏をゲストに迎え、私、HEART CATCH代表 西村真里子がモデレーターとしてセッションを進行した。
登壇者を紹介する。田淵氏は、社会起業家支援とインパクト投資の分野で豊富な実績を持つ。日商岩井株式会社(現双日株式会社)を退職後、LGTベンチャー・フィランソロピー(リヒテンシュタイン公爵家設立インパクト投資機関)や、ソーシャル・インベストメント・パートナーズ、そして一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)などを通じて、国内外のインパクト投資に長年従事してきた。現在は自身が共同創業した株式会社Zebras and Companyの代表取締役として活動する傍ら、2022〜2024年には米国Zebras Uniteの理事を務めている。また、Cartier Women’s Initiative(CWI)には2019年から関与し、東アジア地域の審査員、審査員長を経て、現在は“コミュニティアクティベーター”として日本を含むアジアでのCWI認知度向上とエコシステムの構築に尽力している。