AIを用いて建設や産業施設の作業現場おける安全を監視する香港のスタートアップViAct(ヴィアクト)が、シンガポールテレコムの投資部門、Singtel Innov8を含む投資家から730万ドル(約10億4000万円)を調達した。
ViActが4月16日に発表したシリーズAラウンドは、アイルランドの投資会社Venturewave Capital主導によるもので、韓国投資パートナーズ(KIP)や香港理工大学の起業家支援ファンドが参加した。
ViActの共同創業者でCEOのギャリー・ウンは、新たな資金をAIソフトウェアの改良に充てると述べている。同社は2021年の調達ラウンドで、中国のアリババ創業者基金を含む投資家から200万ドル(約2億8000万円)を調達しており、2022年にはForbes ASIAの注目企業リスト「Asia 100 to Watch」に選出されていた。
建築技師としての訓練を受けたウンは、2016年に学生時代の仲間であるヒューゴ・チョクと共にViactを共同創業した。彼らは、建設業界における業務デジタル化の機会を見出して同社を立ち上げたが、特に職場の安全性をモニタリングするためのテクノロジーに注目した。
2019年にローンチされた彼らのコンピュータビジョン・ソフトウェアは、建設現場に設置された監視カメラからデータを取得し、危険を察知すると現場でアラームを鳴らすと同時に外部の関連機関にアラートを送信する。
「私たちは建設業界の出身であるが故に、この業界のニーズを理解している。そのため他の大手AI企業が対処できないエリアをカバーできる」とウンは述べ、同社が同じく香港を拠点とするAI分野の大手センスタイム(商湯科技)よりも、この分野で優位性を持っていると主張した。
ViActは顧客を石油やガス、鉱業、製造業などの分野に広げ、ガス漏れや不適切なオペレーションなどの問題を検知する機能を追加した。また、配送車両のルート最適化などといった生産性向上や、汚染や不法投棄などの環境関連の監視機能も備えている。
ViActのソフトウェアはこれまでに300以上の現場に導入されており、香港では政府機関や恒基兆業地産(へンダーソン・ランド・デベロップメント)などの大手を顧客としている。同社は財務情報を開示していないが、ウンによると2019年以降、黒字経営を続けているという。
ViActは現在、ドローンやロボットとの連携を模索しており、将来的にはドローンを用いた高層ビルの外壁検査や、ロボットを用いた作業現場の進捗追跡を視野に入れているという。
香港の不動産テック分野の注目企業としては、他にAmpd Energy(アンプド エナジー)などが挙げられる。同社は建設現場向けの電源システムを開発しており、シノ・グループなどの大手のデベロッパーを顧客としている。Ampd Energyも2021年のForbes ASIAの「Asia 100 to Watch」リストに選出されていた。