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経済・社会

2025.04.15 11:45

米、東欧展開中の米軍部隊1万人を削減か 止まらない欧州の米国離れ

Claudio Divizia / Shutterstock.com

Claudio Divizia / Shutterstock.com

米NBCニュースは今月上旬、米国が東欧に駐留する米軍部隊1万人以上を撤退させる可能性があると報じた。ルーマニアとポーランドに駐留する米軍部隊の削減について協議を進めているという。欧州の安全保障に冷淡な態度を取り続けるトランプ米政権に対し、欧州の人々からは怒りの声が漏れる。4月に欧州を訪問した日本の研究者は、欧州側から「戦後秩序を揺るがす米国は、中国やロシアと同じ修正主義者だ」という言葉を聞いて、事態の深刻さを感じ取ったという。

米国内ではNBCの「1万人削減」報道を否定する当局者の発言も出ているが、細田尚志チェコ国防大学インテリジェンス研究所准教授は、ロシアのウクライナ侵攻以降、10万人規模まで増強された在欧米軍の「削減の可能性は高い」と指摘。その理由として、(1)ロシアとウクライナによる停戦合意に向けた対ロシア融和メッセージ、(2)対中国圧力の強化、(3)欧州諸国が欧州防衛に責任を持つようにする圧力,(4)東欧に部隊を展開させたバイデン前政権の政策の否定、(5)米財政赤字の削減、という「5つの目標を一度に達成することができる政策だからだ」と語る一方、「バイデン政権下でも、その数が徐々に削減されてきた事実にも注意が必要だ」と指摘する。

では、今回の削減が本当だとしたら、欧州の安全保障にどの程度の影響を与えるのだろうか。細田氏によれば、欧州に展開中の米軍部隊は現在、約8万4千人とみられている。バイデン前政権は、ロシアの侵攻が始まると、ドイツやイタリア、ギリシャに駐留する米軍と、米本土からの増援部隊を合わせて約2万人の部隊を東欧に展開させた。細田氏は「ポーランドやルーマニア、バルト三国に駐留する米軍戦力が削減されれば、ロシアに対する抑止力が低下する」と指摘する。そのうえで、「ドイツなどの駐留米軍を減らすことになれば、米欧州軍だけでなく、NATO(北大西洋条約機構)の基幹戦力が削減されることになり、欧州諸国の安全保障の負担も増える。場合によっては、欧州諸国がインド太平洋の安全保障に関与できる政治的や人的な余裕がなくなるかもしれない」と語る。

特に、「過去75年近く担ってきたNATOの欧州連合軍最高司令官の役割を米国が放棄する案や、独シュツットガルトの米欧州軍司令部と米アフリカ軍司令部を一つに統合する再編案が現実になった場合、米軍部隊の削減以上に、米軍の指揮・運用能力のみならずNATOの抑止力、そして、欧米関係の弱体化は避けられない」と懸念する。
 

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文=牧野愛博

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