もちろん、トランプ政権の「欧州離れ」が確定したとは言えない。バンス副大統領やコルビー国防次官らは中国を重視する。ただ、バンス氏の場合は背景に、欧州で進む「DEI(多様性、公正性、包括性)」への反発が透けて見えるのに対し、コルビー氏は米国の軍事資源の限界への危機感が出発点になっている。さらに、米共和党に存在する伝統的な欧州重視派によるトランプ政権の政策への反発もある。コルビー氏の国防次官指名の承認を巡り、共和党上院の重鎮、マコネル議員は反対に回った。
しかし、欧州側は「米国は戻ってくるかもしれない」という楽観論は捨てたようだ。欧州連合(EU)は3月6日の特別首脳会議で、防衛力の強化のため、最大8千億ユーロ(約127兆円)規模の資金確保を目指す「欧州再軍備計画」を進めることで大筋合意した。欧州諸国は現時点で、指揮統制システムや情報・通信、核の傘を含む拡大抑止力など、安全保障分野の大半で米国に依存している。日本外務省の元幹部は欧州諸国の戦略について「安全保障で自立するまで10年や20年はかかる。それまで何とか米国を引き留めながら、最終的な自立を目指す考えだろう」と語る。
細田氏も「国際システムでは、国益を自国で確保することが一義的な国家の行動原理。その前提の上で、同志国で協力する枠組みを活用すべきだ。この変動期を、これまでの他力本願姿勢を修正するチャンスと捉え、米国を引き留めながらも、自助努力を進め、新たな日欧の協力の仕組みを構築する機会と認識する必要がある」と語る。
細田氏によれば、ウクライナとの戦闘で損耗したロシアの軍事力(特に陸軍力)は、今回の戦訓を反映した新たな戦い方や部隊編成が採用され、それに応じた新兵器の開発・生産が促進されることで、今後5年以内に豊富な戦闘経験を有する兵士・将校らによって再編成・再強化されると、欧州の専門家の間でみられている。今回の東欧地域からの米軍撤退が事実なら、欧州諸国は5年以内に対抗策を完了させる必要がある。
トランプ大統領は10日、ホワイトハウスで記者団に対し、「私たちは彼らを守るが彼らは私たちを守る必要はない」と述べ、重ねて日米安全保障条約についての不満を表明した。日本も「日米同盟は盤石」とは言っていられない。防衛は、「政府、防衛組織、社会の三位一体」が大前提だと細田氏は強調する。経済的な限界や憲法の制約、国民世論の支持などいろいろな問題があるが、「現状維持」だけでは通用しない時代になったと考えるべきだろう。
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