複数のデバイスから聞こえる「ピン」という通知音は、あなたの心を支配する可能性がある。我々の多くが、この甲高い音に振り回されているものの、こうした状況をどうにかしようとする人は驚くほど少ない。
4月は、米国の「ストレス啓発月間」だ。ピクニックで人間にたかる羽虫のように煩わしい通知音に目を向けるには、ぴったりの時期だ。一見無害な通知音だが、それが生活にもたらすストレスを十分に認識していないと、こちらが考える以上に深刻な影響を及ぼす。対策を取らないでいると、絶え間なく鳴るピンという音は、慢性的なストレスとなって「通知疲れ(ping fatigue)」を引き起こし、燃え尽きの隠れた原因となる可能性がある。
「通知疲れ」とは何か
AI(人工知能)を使ったキャリア支援アプリKickresume(キックレジュメ)の共同創設者でもあるピーター・デュリスCEOは、「忙しい仕事中に通知が殺到するときの、あの感覚をご存じだろうか。あれが通知疲れだ」と述べる。
「昨今では多くの労働者が、複数のアプリやプラットフォームにログインしており、それらの通知が1日中送られてくる。誰かがあなたのファイルを編集していること、もうすぐミーティングが始まること、誰かが連絡をとろうとしていることなどを知らせる自動送信のメッセージだ」
「通知疲れ」とは、Teams、Slack、電子メール、Google Driveなどのプラットフォームから絶えずデジタル通知が届くことで、「常時オン」の感覚に陥り、精神的に疲弊している状態を指す。ストレスや注意散漫につながり、集中力を維持できなくなる可能性がある。
デュリスは、通知疲れの問題によって、オフィスワーカーやテックワーカーが知らず知らずのうちにエネルギーを消耗していると考えており、「(この問題は)労働者の燃え尽きを引き起こす、隠れた原因のひとつになっている」と明かす。さらに同氏は、通知音にたびたび気を取られると、集中力を発揮して仕事への没入感を得られるフロー状態に入ることが、より困難になると述べる。
「自分の仕事を進めることと、同僚と連絡が取れる状態でいることのバランスを常に取るべきだ。共同作業の多い環境で働いている場合には特に重要だ」とデュリスは指摘する。「私は、誰であれ、特に業務時間外まで『常時オン』の感覚でいるべきとは思わない」