数カ月にわたる血みどろの戦いの末に、ロシア軍は昨年12月、ウクライナ東部ドネツク州の要塞都市クラホベを占領した。廃墟と化しているクラホベは、ドネツク州のウクライナ側支配地域の南周縁にある陣地を支える要衝だった。しかし、多大な損害を被って疲弊し、装甲車両も絶望的なまでに不足したロシア野戦軍は、クラホベから西へ数kmしか支配地を広げられなかった。
4カ月後、ロシア軍はようやく新たな攻勢に向けて兵力を集めたようだ。ウクライナのシンクタンク、フロンテリジェンス・インサイトの創設者であるTatarigamiも10日、ソーシャルメディアへの投稿で「向こう数カ月、ロシアの攻撃行動が南部でさらに拡大するとわれわれは予測している」と言及していた。
この動きはすでに数日前に始まっていた。8日、ロシア軍の大規模な部隊が、クラホベの北西に位置するヤセノベ村付近から西方の複数の地点に攻撃を仕掛けた。ウクライナ軍のホルティツャ作戦戦略軍集団は「2時間のあいだに、(ロシア軍の)4つの混成部隊が異なる方向から異なる時間に、ボフダニウカ集落方面に出発した。歩兵、バギーやオートバイ、装甲車、歩兵戦闘車、戦車に乗った部隊だった」と報告している。
ホルティツャ作戦戦略軍集団によると、各部隊にはそれぞれ任務があった。「作戦計画はおそらく、ウクライナの防御線を突破(または破壊)し、ボフダニウカ、トロイツィケ、ホリホベの各集落を占領するというものだった」と同集団は推測している。
ドローンの壁
しかし、この方面のウクライナの防御線は、強力な第72独立機械化旅団、いくつかの海兵隊部隊、そしていつもどおりドローンチームが保持している。監視ドローンは、ロシア軍部隊が来るのを観察していた。FPV(一人称視点)攻撃ドローンがそれに群がった。その結果もたらされた大量死は、3年2カ月近く続くロシアによるウクライナに対する全面戦争の残酷な基準に照らしても衝撃的だった。
ドローンは車両を攻撃して動けなくし、さらに、生き延びて脱出した乗員や歩兵も付け回した。多数のドローンが同時に攻撃を行っていたので、1機の爆発によって、付近を飛んでいた別の1機の弾頭が誘爆したほどだった。ロシア兵らは手足を失い、失血死していった。
❗️🇺🇦Ukrainian soldiers from the 137th Marine Battalion repel a 🇷🇺Russian offensive pic.twitter.com/bD8gcVoEkx
— 🪖MilitaryNewsUA🇺🇦 (@front_ukrainian) April 11, 2025
ホルティツャ作戦戦略軍集団は、ロシア軍の4つの突撃部隊はいずれもウクライナ軍の陣地に到達しなかったと主張している。戦闘後、ウクライナ軍のドローンは、ロシア軍の破壊された戦車2両、装甲兵員輸送車2両、バギー4台、オートバイ4台、死者50人を確認している。
この結果はTatarigamiにとって驚くようなものではないだろう。Tatarigamiは「ウクライナ軍の状況は依然として複雑で、全体の『バランス』はロシア側に傾いている」としつつ、「ロシアは最近、ウクライナが置かれている状況を悲惨なものと描こうとしているが、これまでのところウクライナ国内で作戦上あるいは戦略上の成果を収めるには至っていない」と指摘している。