ウクライナ空軍機が7日、南部のヘルソン州にあるロシア軍の掩蔽壕に対して精密誘導爆弾を投下した。MiG-29戦闘機による数十km離れた距離からの爆撃だったのかもしれない。
ウクライナ軍参謀本部の発表によれば、目標はロシア軍第81自走砲連隊の指揮所で、最大30人が死亡したという。日中に行われたこの爆撃のあと、消火のためか、数人が火元に瓦礫を投げ込む様子もウクライナ軍のドローン(無人機)によって撮影されている。
Russians try to put out the fire with their hands and clear the rubble after the Ukrainian air strike on Russian underground base in Kherson region https://t.co/QB5pm3s57z pic.twitter.com/VjahiSVjvt
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) April 9, 2025
ウクライナ空軍によるバンカーバスター作戦は1週間かそこらで2回目だ。3月31日かその少し前には、MiG-29が同じくヘルソン州で、ロシア軍が指揮所を置いていた旧ソ連時代の地下壕に特製のGBU-62滑空爆弾を投下していた。
この爆撃について、ウクライナのある軍事ブロガーは「高級将校団が装備もろとも無力化された」と書いている。「こうした打撃は敵軍から明確な指揮統制を奪うとともに、部隊の士気を著しく低下させる」とも指摘している。
ウクライナ空軍が今回、第81自走砲連隊の指揮壕を狙ったのにはそれなりの理由がある。ロシア陸軍第18諸兵科連合軍の第70自動車化狙撃師団に所属する同連隊は、ヘルソン州を流れる大河ドニプロ川の左岸(東側)を占領しているロシア軍に重要な重火力を提供しているのだ。
ロシアは新たな攻勢を準備か
ヘルソン州方面では、ウクライナ軍の迅速な攻勢によって州の大半が解放されてから2年4カ月後、ロシア軍が新たな攻勢を計画している可能性がある。今年1月、ウクライナ側が保持するドニプロ川右岸(西側)のウクライナ軍砲兵部隊を現地取材した米公共ラジオNPRは、ウクライナ当局者の情報として、ロシア軍が大規模な水陸両用作戦のため兵力を増強している可能性があると伝えている。
これについて質問されたウクライナ兵のひとりは、そうした攻撃はむしろ歓迎だと答えている。「われわれはロシア軍が攻撃してくるのを楽しみにしています。やつらをもっと撃破する機会を得られますから」
とはいえ、ヘルソン州方面のウクライナ軍の地上戦力は手薄だ。ウクライナ軍参謀本部は最も優秀な重戦力を東部に集中させており、その東部ではウクライナ軍がようやく、疲弊が進むロシア野戦軍による最近の前進を一部押し返している。
ヘルソン州方面の防衛は、先ごろ改編され、泥地や湿地での作戦に向いた軽量級車両を主に配備されているウクライナ海兵隊第34、第39、第40各独立沿岸防衛旅団が主力を担っている。十数個の連隊や旅団を配置しているロシア軍に対しては数的に劣勢にある。
しかし、ロシア軍部隊の指揮壕を爆破して将校らを瓦礫にうずめれば、指揮統制を奪うことでロシア側のマンパワー(人的戦力)の優位性を損なえるはずだ。