欧州連合(EU)は4月9日、人工知能(AI)分野の競争力を高めるための、これまでで最も積極的な取り組みを開始した。EUの執行機関である欧州委員会は、「AIコンチネント行動計画(AI Continent Action Plan)」と呼ばれる取り組みを通じて、米国や中国との間で広がるAI分野のイノベーションの格差を縮める計画だ。
EUはこの計画の中心に、「AIギガファクトリー」と呼ばれるコンピューティング施設のネットワークの構築を置いている。これらの施設には、現状のAIファクトリーの4倍の10万台の最先端チップがそれぞれ導入されるという。EUは、AI関連に2000億ユーロ(約32兆2000億円)の資金を投じる方針で、そのうち約200億ユーロ(約3兆2200億円)を最大5カ所のギガファクトリーの設立に充てる計画だ。
しかし、この金額は世界の競合の取り組みと比べると見劣りする。米国のマイクロソフトやOpenAI、エヌビディアらのコンソーシアムは、2月に「スターゲート」と呼ばれる1000億ドル(約14兆7000億円)規模のAIデータセンタープロジェクトを発表しており、今後の投資額は最大5000億ドル(約73兆4000億円)に達する可能性がある。一方、中国企業のDeepSeekなどは、最先端チップへのアクセスが制限された中でも高度なAIモデルの開発に成功している。
EUは、AI開発を加速させるために官民の連携を後押しすると同時に、「クラウド・AI開発法」の導入を進めている。この法案は、今後の5〜7年で欧州にあるデータセンターの容量を3倍に拡大することを目指すもので、AI向けのシステム需要が急増する中で極めて重要な取り組みとなる。
欧州はまた、データの取り扱いに関しても大きな課題を抱えている。EUが制定したGDPR(一般データ保護規則)に含まれる厳格なプライバシー保護措置は、洗練されたAIモデルに不可欠なトレーニングデータの入手を困難にしている。EUはこの問題に対処するために、プライバシー規制を順守しながらデータセットを集約する「AIデータラボ」を設置する計画だ。