ビリオネアのイーロン・マスクは、4月8日のX(旧ツイッター)の投稿でトランプ政権の関税政策を主導するピーター・ナバロ大統領上級顧問を「完全にバカだ」と罵り、ナバロ側が否定してきた対立をさらに深めた。マスクは、トランプ大統領の高関税政策の一部に反対する姿勢を示している。
マスクによるこの発言は、ナバロが7日にCNBCでコメントした内容への反応だった。ナバロは、マスクがトランプ政権の関税政策に反対しているのはテスラが輸入部品を使用する自動車メーカーだからだと主張し、マスクのことを「自動車の組立業者」と呼んで批判した。
マスクはこの発言が「明らかな誤りだ」と主張して、ナバロのことを「完全なバカ(Navarro is truly a moron)」と呼び、テスラが米国製部品の使用率が最も高い4車種を製造していることを示すケリー・ブルー・ブックの調査を引用。これに続く投稿でも彼は、ナバロのことを差別的な言い回しで侮辱した。
マスクは、今回の対立の以前から、ナバロがトランプ政権による相互関税の税率の算定方式を擁護したことを非難していた。トランプ政権の税率の算定は、主に貿易赤字のみに基づく単純すぎるものであり、他国が米国からの輸入品に課している個別の関税率や貿易障壁を考慮していないと広く批判されている。
マスクは、すでに削除された5日のXの投稿においてもナバロを非難し、彼が「ハーバード大学で経済学の博士号を取得したのは悪いことであって、良いことではない」と語り、「米国のあらゆる災害の中心には、いつもハーバードの出身者がいるようだ」という経済学者トーマス・ソウェルの言葉を引用していた。
ホワイトハウスの報道官のキャロライン・レビットは、2人の対立に関してCNBCにコメントし「我々は歴史上最も透明性が高い政権であり、意見の相違があることを公にしている」と語っている。
ナバロはマスクとの確執を否定し、CNBCに「イーロンとはすべてうまくいっている」と語った。また6日にFOXニュースに対して、「問題ない。確執なんてない」と述べたが、マスクには通商政策を語る上での説得力が欠けているとの見方を示唆した。「イーロンは、政府効率化省(DOGE)の職務についてはすばらしい」とナバロは述べつつ、マスクが関税に関して「単純に自分の利益を守ろうとしているだけだ」と主張した。
他の富豪もトランプ関税に反対
自動車業界はトランプの関税によって最も打撃を受けた業界の1つであり、テスラの株価もトランプ政権の関税の発表以降に急落した。
マスクはトランプの関税について直接コメントはしていないが、Xの投稿からは、この関税に不満を抱いている様子がうかがえる。彼は、7日に経済学者ミルトン・フリードマンが自由貿易を称賛する有名な動画を投稿していた。
トランプ政権の相互関税に反発するトランプ支持者の富豪は、他にも複数存在する。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、関税によってインフレが進み、景気後退の可能性が高まると予測した。また、ヘッジファンドの富豪ビル・アックマンも、9日に発効予定の関税の一時停止を求めている。