クレムリンの弾圧は命にかかわる
ペトロワの置かれた立場に対する懸念は、クレムリンがこれまでどのような手段で反対派を排除してきたかという十分すぎる実績に裏付けられたものだ。
プーチン批判で名高かった野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイは、2024年2月に人里離れた流刑地で不審な死を遂げた。同じく野党指導者だったボリス・ネムツォフは、2015年にクレムリン近くで暗殺された。チェチェン共和国における人権侵害を暴露したことで知られるジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤは、2006年にモスクワの自宅アパートで殺害された。セルゲイ・スクリパリとアレクサンドル・リトビネンコは、ロシア国外で元スパイが毒を盛られた事例で、リトビネンコは死亡した。これらの事件は、反体制派を封じ込めるためなら暗殺も辞さないプーチン政権の体質を表す典型例だ。
今必要なのは道徳的勇気
米国は岐路に立たされている。言論の自由と迫害された人々の保護という建国の理念を守るのか、それとも権威主義の圧力に屈し、米国の庇護を求める人々を裏切るのか。ペトロワを強制送還するならば、それは彼女の命を危険にさらすだけでなく、米国が世界規模の抑圧に加担する危険な方針転換を示すシグナルとなるだろう。
学術機関、人権団体、そして一般市民は、トランプ政権に説明責任を果たすよう求め、建国の理念を反映した政策を行うよう訴えなければならない。ペトロワやハリルのような個人を保護することは、単なる法的義務ではなく 、道徳的義務なのである。
ペトロワの強制送還危機や、政治的信条を理由に国外退去処分に直面している他の人々の存在は、移民取り締まりの政治利用という不穏な傾向を浮き彫りにしている。米国には、歴史に学び、抑圧の道具となることに抵抗して、万人のための自由と正義という建国理念を守る覚悟を再確認する責務がある。