スタートアップとアトツギベンチャーが交差し、旗を立てる挑戦者を瀬戸内から応援する新たな経済番組「Setouchi Startup Flag」(通称・セトフラ)。
瀬戸内エリア内外の起業家やアトツギをゲストに招き、瀬戸内・中四国特化型ベンチャーキャピタル「Setouchi Startups」の共同代表、藤田圭一郎と山田邦明がVC目線でゲストのビジネスストーリーを深掘りします。
今回は、ソフトバンク・アエリアなどで複数の上場を経験し、現在は20社超のスタートアップに関わる須田仁之さんをゲストにお迎えした回をご紹介。
経営企画やCFOとして第一線を走ってきた須田さんが、なぜ惣菜屋を立ち上げ、皿洗いから再出発したのか。上場企業でのファイナンスやM&A、そして東京や資本主義に疲れた今、目を向ける地方との関わり方まで、キャリアの裏側を語っていただきました。
上場経験者が挑んだ“惣菜屋” 異色キャリアの転機
須田:須田仁之です。新卒でイマジニアというベンチャー企業に入社しましたが、1年半で辞めてしまいました。20代のほとんどはソフトバンクに在籍しており、経営企画・事業企画で今でいうスカパー!やYahoo! BBの立ち上げなどに携わっていましたね。
当時は7日間会社から家に帰ることができないこともありました。ソフトバンクと光通信のジョイントベンチャーを作って立ち上げをしていた時は、社員5人で10億円程度の利益を出しています。
現在は、20社ほどのITスタートアップ・ベンチャー企業の社外役員やアドバイザーをしています。
藤田:フリーランス時代には、惣菜屋をやっていたと聞きました。
須田:そうですね。ソフトバンクを辞めて入ったアエリアの売却が終わった後、役員3人で次に何をするか話し合っていました。友人でもある社長が「IT以外をやろうぜ」と言ったことをきっかけに、信頼していた彼が動くなら一緒にやってみたいと考え、惣菜屋をやることにしました。
僕以外の2人はまだアエリアの代表だったので、社長をやるわけにはいかず、代表をやってくれと言われるがまま有限会社スダックスを作りました。結果として、惣菜屋を半年で閉店しています。
藤田:惣菜屋は一から始めたのですか?
須田:一からです。やったことがないので、飲食店経営という雑誌を買うところから始めました。ネットで検索をしたり、飲食店のプロデュースをしている人に話を聞きに行ったりもして。
その時に出会った飲食店のプロデューサーに「君たち面白いな」と言われ、まずはラーメン屋をやることを勧められました。飲食事業の中でも惣菜屋はメニュー数が多いからこそロスが多く、一番難しいからと。勧められるままに、池袋のラーメン店で2カ月間の修行をすることになり、皿洗いから始まり、掃除もしていましたね。
山田:成功体験があったからこそ、ここからやり直しかと思いそうですね。
須田:朝、池袋で掃除していると、スーツ姿で颯爽と歩くサラリーマンたちが目に入りました。以前は自分の方がもっとちゃんとしていたのにと思うと、どこか崖を転がり落ちるような感覚でした。
そうやってラーメン屋での修行を行っていましたが、そのプロデューサーとアエリアの社長の意見が対立しはじめて、結局ラーメン屋ではなくちゃんと惣菜屋をやることになりました。外部コンサルに頼るより、自分たちの手でやろうと決めたんです。