ロシア空軍のTu-22M爆撃機が東シベリアのイルクーツク州で墜落した。ロシアがTu-22Mを失うのは、2022年2月にウクライナに対する全面戦争を開始して以降ではおそらく5機目だ。
墜落場所とされる同州ウソリスキー地区はウクライナから4300kmほど離れている。ロシア空軍に情報源を持つとされるテレグラムチャンネル、Fighterbomberは2日、墜落を認め、「乗員の捜索が行われている」と報告している(編集注:タス通信によるとロシア国防省も墜落を確認し、暫定的な情報として「技術的な不具合」によるものとしている)。
Russian channels are reporting that a Tu-22M3 “Backfire-C” Long-Range Heavy Bomber, which are regularly used by the Russian Air Force for missile attacks against Ukraine, has crashed in the Irkutsk Oblast of Siberia. A search-and-rescue operation for the crew of the bomber is… pic.twitter.com/dw023nILW2
— OSINTdefender (@sentdefender) April 2, 2025
全長約42m、乗員4人のTu-22Mは冷戦時代の爆撃機の改良型で、対地巡航ミサイルや対艦巡航ミサイルを搭載できる。ロシア空軍は全面戦争前には60機ほどを保有しており、これまでに10%近くが失われたことになる。
Tu-22Mはウクライナから見ればテロ兵器である。この爆撃機は主にウクライナの都市を攻撃目標にしており、犠牲者はほとんど民間人だ。
Tu-22M戦力もこの戦争で大きな打撃を受けている。今回の墜落に先立ちもう1機墜落しているほか、1機はウクライナ軍によって撃墜され、2機がウクライナのドローン(無人機)によって撃破されるか深刻な損傷を受けている。
ウクライナの長距離攻撃ドローン戦力はこのところ、ロシアの爆撃基地に対する攻撃に注力している。ウクライナから650kmほど離れたロシア南部サラトフ州のエンゲリス2空軍基地に対しては、1月から3月にかけて3度にわたる攻撃を行い、直近の攻撃では爆撃機に搭載される巡航ミサイルを96発破壊した。
迎撃困難な爆撃機
Tu-22Mはほとんどの場合、スタンドオフ攻撃を行い、最大1000kmほど離れたところから巡航ミサイルを発射している。つまり、通常はウクライナ軍の地対空ミサイルの射程圏外にとどまっている。
とはいえ、その乗員にとって爆撃任務はまったく安全なのかと言えば、そうではない。昨年4月、Tu-22Mの一機はKh-22巡航ミサイルを発射したあと、ロシア南部上空を飛行中に、ウクライナ軍の古いが強力なS-200とみられる地対空ミサイルシステムで撃墜された。
A Russian strategic bomber type Tu-22M crashed. The reasons are unknown.
— (((Tendar))) (@Tendar) April 19, 2024
Source: Telegram / Mash, Sternenko pic.twitter.com/C6llS98Mpo
1960年代に開発されたKh-22を搭載するだけでも危険を伴う。航空専門家のビル・スウィートマンは「4tかそこらのハイパーゴリック(混合発火性の)燃料を含む旧式ミサイルを抱えて飛び回ることほど、楽しいこともない」と皮肉っている。
Tu-22M戦力がウクライナの民間人を恐怖に陥れる傍ら耐えてきたこうした危険や損失にもかかわらず、残りのTu-22Mが一時的でも攻撃を休止するとは考えにくい。ロシア空軍の爆撃機の損失ペースは年に1〜2機にすぎない。Tu-22Mと、より大型のTu-95、Tu-160両戦略爆撃機は、長期にわたりウクライナを爆撃するのにまだ十分すぎるほどの数がある。