米ウィスコンシン州で4月1日に実施される州の最高裁判事の空席を争う選挙が、全米の注目を集めている。トランプ大統領とイーロン・マスクは、共和党候補への支持を呼びかけており、マスクは、民主党が支援する「活動家判事」に反対する嘆願書に署名した有権者らに現金を提供すると宣伝している。
来月1日に行われる同選挙は、大統領選の激戦州として知られるウィスコンシン州の最高裁における左右の勢力バランスを決定するもので、トランプ政権の今後を占う試金石になると見られている。また、マスクが所有するテスラにとっても、共和党候補が勝てば、有利に働く可能性がある。
マスクとトランプは、共和党の候補者のブラッド・シメル判事を支持しており、民主党の支持者たちはスーザン・クロフォード候補を支持している。
この選挙は、主要な激戦州として知られ、現在は民主党系の判事が多数を占めるウィスコンシン州の最高裁の支配権をどちらの党が握るかを決定するもだ。また、この選挙は2期目のトランプ政権が始まって以降で初の大規模な選挙であることから、トランプ政権の今後を左右する選挙とみなされている。
ワシントン・ポスト紙の集計によると、マスクの関連団体はシメルの支援に少なくとも1300万ドル(約20億円)を投じており、そのうち600万ドル(約9億円)以上がマスクのスーパーPAC(特別政治活動委員会)の「アメリカPAC」から支払われている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙によれば、アメリカPACは「活動家判事に反対する請願書」に署名した有権者に100ドル(約1万5000円)を提供している。マスクは22日にX(旧ツイッター)上でシメル候補と公開対談を行い、少なくとも300万ドル(約4億5000万円)をウィスコンシン州の共和党に個人で献金した。
トランプも、自身のSNSでシメルへの支持を表明し、「クロフォードが勝てば、国家の再建のための動きがウィスコンシン州で頓挫する」と主張した。「これは本当に重要な選挙であり、我が国の将来に大きな影響を与える可能性がある」とトランプは述べている。
「中絶の権利」も争点に
共和党が支持するシメルは、ウィスコンシン州の地方裁の判事で、同州の元司法長官でもある。保守派の考えを持つ彼は、中絶の権利に反対し、黒人有権者の投票制限を目的として制定されたとされる有権者ID法を支持している。シメルはまた、選挙の不正の主張を展開してきたトランプの言説をなぞるように、今回の選挙で「不正ができないほどの大差をつける」と述べている。
一方、民主党が支持するクロフォードも、州の地方裁の判事で、それ以前は民間の弁護士だった。彼女は、中絶の権利を支持しており、「ロー対ウェイド判決」を覆した連邦最高裁の判断が「誤りだった」と発言している。また、以前にウィスコンシン州の有権者ID法に反対する訴訟で原告の代理人を務めたこともある。
「2028年の大統領選」にも影響
4月の選挙は、ウィスコンシン州最高裁の今後の方向性を左右するものであり、複数の注目の裁判に対する判断に影響を与える可能性がある。また、ウィスコンシン州は2028年の大統領選における注目の激戦州となるが、この裁判の結果は、その際の投票ルールに影響を与えることになる。さらに同州では中絶の権利をめぐる複数の訴訟が進行中だ。