経営・戦略

2025.03.26 12:30

開始から5年、Netflixは「ゲーム業界のネトフリ」になれるか?

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Netflixが従来の受動的なエンタメから、よりインタラクティブな体験への進化を目指す動きは、理論上は非常に理にかなっている。ゲーム業界は今や、ハリウッド映画やテレビ業界をはるかにしのぐ規模に成長し、若年層にとっての主な娯楽となっている。

Netflixの共同CEOのテッド・サランドスは、すでに2019年の段階で、ユーザーの注目を奪う最大の競合相手に『フォートナイト』を挙げており、それがEpic Gamesで『フォートナイト』を担当していた幹部であるタスカンを会社に招き入れた理由のひとつであることは間違いない。

しかし、同社が初期に試みた『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』のような話題性の高いインタラクティブ作品は定着せず、2023年11月にはこの手のタイトルを数十本、ライブラリから完全に削除すると発表した(『バンダースナッチ』は現在も残る4本のうちの1つだ)。

これまでのところ、Netflixは、広く一般層の関心を長期間にわたって惹きつけ続けられるようなゲームを一度も生み出せていない。同社が成功例として挙げるゲームの『イカゲーム:地獄のデスマッチ』でさえ、Apptopiaのデータによれば、2023年12月のリリース時に600万ダウンロードを記録し、翌年1月には1300万ダウンロード近くまで伸びたものの、翌年3月には約10万ダウンロードまで落ち込んでいた。

「独自の指標」を成功の基準に

一方、Netflixは、ゲームの成功の基準を独自に定めており、新規加入者の獲得や維持、あるいはドラマなどのコンテンツへの視聴者の誘導などの指標を重視している。『イカゲーム:地獄のデスマッチ』では、シーズン1と2を視聴したユーザーに報酬を与える「視聴連動」機能の実験も行われた。

「その効果は現時点では小さいが、率直に言ってゲーム分野への投資額は全体のコンテンツ予算に比べればまだ少ない」とNetflixの共同CEOのグレッグ・ピーターズは、2024年1月の決算発表で述べていた。

そんな中、Netflixのゲーム部門の強みは、試行錯誤するための十分なリソースがあることだ。同社は2024年に全体収益を16%増加させ、営業利益は100億ドル(約1兆5000億円)、フリーキャッシュフローは70億ドル(約1兆500億円)近くに達していた。

「彼らにとってゲームが、コア事業だとはまったく思わない。しかし、これは決して突飛な試みではない。Netflixはすでに相当な金を注ぎ込んでいる」とKonvoy Venturesのチャップマンは述べている。

Netflixは近い将来、アプリ内課金や広告といった収益化の手法を導入する可能性が高いと彼は考えている。「それまでの間、彼らはゲーム市場での立ち位置を模索し続けるための十分な余裕がある」と、チャップマンは指摘した。

タスカンも、その見方に同意しつつ、ゲーム業界がレイオフや予算の削減などの逆風に直面する中で、Netflixが置かれた状況が「特権的」だと語った。「私は、社内のチームに時々こう話しかけるんだ。『我々は、有利なチケットを持っている。じゃあ、それをどう使えばいいだろう?』ってね」

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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