盲導犬を連れて飲食店に入ろうとすると「犬はダメ」と断られる。昔の話かと思いきや、2024年の調査でそうした経験を持つ視覚障害者は盲導犬利用者の約半数にのぼることがわかった。
全国盲導犬施設連合会は、同会に加盟する盲導犬協会の盲導犬利用者576人を対象にアンケート調査を実施した。その結果、店舗、飲食店、宿泊施設、公共交通機関などで受け入れを拒否された経験を持つ人は48パーセントにものぼった。

拒否された場所は飲食店が43パーセントと圧倒的に多く、続いて交通機関(14パーセント)、宿泊施設(12パーセント)となっている。1人が何度も拒否されることも多いため、延べ件数は1144回となる。
2002年、身体障害者の自立や社会参加を促すために、介助犬を国が認定する「身体障害者補助犬法」が施行された。店舗などの施設には、国の証明書を持つ介助犬を連れた障害者を受け入れる義務がある。また2016年には障害者を不当に差別することを禁ずる「障害者差別解消法」、2024年には「改正障害者差別解消法」が施行されて、これまで努力義務だった障害者への「合理的配慮」、つまり障害者とそうでない人とが平等に暮らせるように障壁を取り除くことが義務化された。しかし、これらの法律の存在を知らない人が多い。
法律が整備されて人々の理解に変化があったかを尋ねると、良い変化があったと感じる人が22パーセントいたものの、変化したとは思わない人が77パーセントだった。拒否理由のトップは「動物や犬はダメ」というもので、61パーセントの人が経験しているが、2020年の調査でもこれが62パーセントでトップだった。

しかも、視覚障害者をとりまく環境は改善どころか悪化している部分もある。人員削減の穴埋めとしてタッチパネルで注文する飲食店が増えているが、目が不自由な人には使えない。無人駅でキップを買うのも苦労する。人がいなくなり機械が対応するようになると、助けを求めることもできないわけだ。こうした無神経なDXに障壁を感じる人は59パーセント。本来、健常者に合わせて作られた社会で不自由なく生活できるよう障壁を取り除く役割を担うべきIT技術が、むしろ新たな障壁を生み出している。
拒否理由の2位は「ほかの人に迷惑がかかる」(40パーセント)だが、それは障害者差別を客のせいにする言い分にも聞こえる。またこれは「目の見えない人は迷惑だ」と言っているのと同じ。明らかな法律違反であり、何より人格が疑われる。そうした行為を無意識に行って人を傷つけていないか、我々はよく考えるべきだろう。