マーケティング

2024.09.26 14:15

新しい「点字ブロック」をつくり50万人に恩恵。ペルーのセメント会社のアイデア

「SIGHT WALKS」

ここ何年も、カンヌライオンズでは、企業やブランドによる社会課題解決事例が高位の賞を受賞してきた。“カンヌライオンズと言えば、社会課題解決”という認識は、マーケティング・ビジネス界においては、すでに広く知られている事柄だ。

なかでも、インド、メキシコ、ホンジュラスといった、グローバルサウスと呼ばれる国々からの応募作がゴールドやグランプリを受賞した例が記憶に残る。女性の避妊薬が認められていないという社会課題解決、子どもたちの間でマメに手を洗う習慣がないという社会課題解決などなど……。
 
こうした受賞傾向に対して、「日本は明示的な社会課題が少ないから不利だ」と言う日本のクリエイターやプランナーも少なからず存在する。ただ筆者は “目のつけどころ”次第では日本の企業やブランドにもチャンスはいくらでもあると考える。

今回紹介するのは、そんな日本のクリエイターにも参考にしていただきたい事例だ。ペルー最大のセメント企業“セメントSol”による「SIGHT WALKS」で、カンヌライオンズ2024でデザイン部門グランプリ等を受賞した。


Sol Cement - SightWalks (case study)

視覚障害の方が街を歩く時のガイドラインは世界標準で、歩道に縦のライン(線状ブロック)があれば進んで良し、車道等に向かう場所で丸い突起物(点状ブロック)があれば止まれ、である。視覚障害者は白杖(はくじょう)でこれらのサインを読み取ることで、より安全に歩行ができる。

しかし、セメントSolは、それだけでは足りないと考えた。日常生活に必須のサービスを提供する場所(銀行、食料品店、ドラッグストア、レストランなど)に行く際、視覚障害者は他の人の助けを借りざるを得ない現状がある。それは、彼ら彼女らの自由と自律を少なからず阻害しているからだ。

同社は、自分達が最も得意とする”セメント”を使うことで、歩道上にある視覚障害者用サインをアップデートしようと考えた。これは、同社の経営理念 / ブランドパーパス「ベストなセメントによってつくられた質の高い構造物で、人々の暮らしをより良いものに変える」にも基づいている。
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文=佐藤達郎

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