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サイエンス

2025.03.26 09:00

AI裁判官は厳密に法に従い、人間の裁判官は「心ある」判決を下す 研究結果

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研究結果が司法とテクノロジーに及ぼす影響

AIと人間の司法判断の対比は、司法制度の核心にある深遠な問題を浮き彫りにしている。人間の裁判官が被告人の個人的な事情を考慮して判決を下す場合、それは無関係な要素で司法を腐敗させていることになるのだろうか、それとも司法の最も奥深い目的にかなっているのだろうか?

判例に従えば厳罰に処されて当然だが、被告人は寛大な処分が正当化され得る特殊な状況にあった、というケースを考えてみよう。AI裁判官はためらうことなく判例どおりの判決を下すだろう。人間の裁判官は、法律と目の前の人間的要素の両方を天秤にかけて、いったん立ち止まるかもしれない。

どちらのアプローチが本質的に優れているのか。それは、正義を為すのに真に必要とされるものを何とみなすかにかかっている。一貫性と予測可能性を最も重視するのであれば、AIのアプローチに明らかな利点がある。正義の遂行には時に例外や人間の知性が必要となると考えるのであれば、人間の裁判官が同情的要因に動かされる可能性は司法制度のバグではなく、単なる特徴の一つということになる。

ジョン・G・ロバーツ・ジュニア米連邦最高裁長官は以前「私は、人間の裁判官はまだしばらくの間いなくならないだろうとみている」と述べた。今回の発見は、その理由を示唆している。AIは機械的な正確さで法規を適用できるが、太古の昔から正義とは何かを定義してきた属性を持たないのだ。それは、理性と思いやりを兼ね備えた人間の判断力である。

哲学的な疑問は残る

シカゴ大の研究チームが結論づけているように、ルールに従うAIのアプローチと人間の示す繊細な配慮のどちらが「より良い」司法判断を下せるのかという問いの答えは、「何世紀にもわたって学者を悩ませてきた法学上の論点よりも、AIの進歩に左右されるかもしれない」。

「完璧な裁判官」をめぐる議論は古来より行われてきた。司法は盲目的に、誰が法廷に立とうと公平にルールを適用するべきなのか。それとも、一人一人の人間性をつぶさに見抜き、状況に応じて法の厳格な条文を慈悲で和らげてこそ正義は為されるのだろうか?

今回の研究は、この古くからの疑問に答えてはいないが、AIと人間では司法の推論に対するアプローチが根本的に異なることを示している。その違いは、AIにとっても人間の裁判官にとっても、技術的というよりも哲学的なものかもしれない。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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