起業家

2025.04.03 13:30

世界初、低活動膀胱の治療薬創出へ、Juro Sciencesの役割

三澤宏之|みやこキャピタル(写真左)長袋 洋|Juro Sciences(同右)

長袋:低活動膀胱という泌尿器の疾患は、60歳以上の総人口の15%程度が症状をもっていて、世界的に巨大な市場。日欧米の合計で、年間60億ドル規模になると試算しています。

一方で、診断や治療方針が難しくて、今はまだ治療薬が存在していません。今年から国内で少数の健康な人を対象としたフェーズ1試験を、26年には日米でフェーズ2試験を実施して、28年をめどに有効性を確認し、製薬会社に売却する計画です。フェーズ2でいいデータが取れれば、必ず買い手は見つかるはずです。

三澤:実は、長袋さんは米製薬会社メルクの研究所に勤めていた経験をおもちで、泌尿器分野の創薬研究していた専門家でもあり、専門医の先生たちとのネットワークも豊富。自分たちの力だけでなく、外部の一流の専門家の力を借りながら、日本発で世界初の低活動膀胱の治療薬を生み出せるのではと期待しています。

長袋:我々は、どうすれば薬を効率的に世の中に出すことができるのかを熟知したプロフェッショナルな集団です。治療薬の創出はもちろん、M&Aの実績をつくって、かかわったメンバーたちが、今度は次世代を担う起業家になってくれればいいと思っています。

三澤:日本の多くの創薬スタートアップは、大学発の研究成果を生かそうと頑張っているのですが、アセットを磨き、製品としての仕上げをすることができる人材はすごく少ない。この構造的な欠陥を解消したいですね。IT業界では、M&Aの事例が増えていて、成功した人たちがメンターやエンジェル投資家になって、いろんな人を育てています。長袋さんは、すでに次の新薬候補の化合物にも目をつけていて、継続的にM&Aを生み出していく仕組みも構築中です。バイオ業界に新しい循環を生み出したいですね。


みさわ・ひろゆき◎みやこキャピタル パートナー。アカデミアで7年間、ライフサイエンス分野の研究・指導に従事。日本アジア投資(JAIC)での投資責任者・ファンドマネージャーなどを経て現職に至る。埼玉大学大学院修了、理学博士。

ながぶくろ・ひろし◎Juro Sciences代表取締役CEO。製薬業界で25年以上の創薬研究経験をもつ。2018年に武田薬品工業からのスピンアウトでARTham Therapeuticsを共同設立。同社を科研製薬に売却後、21年12月にJuro Sciences を創業。

文=眞鍋 武 写真=平岩 享

タグ:

連載

私がこの起業家に投資した理由

ForbesBrandVoice

人気記事