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サイエンス

2025.03.28 18:00

融解が進む永久凍土、太古の病原体の復活にどう備えるか

Andrei Stepanov / Shutterstock

科学者たちはすでに、シベリアの永久凍土から3万年前のウイルスをよみがえらせており、その感染力は失われていなかった(ただし、このウイルスはアメーバにしか感染しない)。ヒトに影響を与えるウイルスの復活はまだ起こっていないが、休眠状態にある古代の微生物が活性を保っていた事実は、不穏な可能性を示唆する。

この巨大な冷凍保管庫には、ほかに何が潜んでいて、目覚めの瞬間を待っているのだろう?

太古の病原体の復活にどう備えるか

北極圏は現在、未曾有のスピードで高温化しており、永久凍土の融解の影響は、すでにリアルタイムで生じている。温室効果ガスの放出は、十分な知見に基づく気候モデルの予測に従っているが、古代の微生物の再出現は、不確定要素に満ちたパンドラの箱だ。

永久凍土に封じ込められた微生物やウイルスの大部分は未知の存在で、その多くが活性を保っている可能性がある。率直に言って、こうした微生物が、人類や動植物の健康に対する重大な脅威なのかどうかを、私たちはまだ知らない。誰にも気づかれないまま、周囲の環境に埋もれていくだけ、ということもあるかもしれない。

危機が発生する前にこうした謎を解明しようとする科学的取り組みは、すでに進んでいる。ケナガマンモスの「脱絶滅」計画で知られるColossal Biosciences(コロッサル・バイオサイエンシーズ)などの企業も、古代の遺伝物質の先駆的研究を進めている。こうした研究は、永久凍土に囚われた微生物が復活する前に、先手を打って分析を行うことに役立ちそうだ。

合成生物学、メタゲノミクス、病原体出現の監視といった分野での進展も、北極圏の冷凍保管庫から出現するかもしれない微生物の脅威を評価し対抗する方法を提供してくれる可能性がある。

北極圏が変貌を遂げるなか、いま眼の前で起こっていることは、単なる景観の喪失ではない。人類がほとんど何も知らない「太古の世界」が解き放たれようとしているのだ。それが地球規模の公衆衛生上の危機を招くのか、それとも、科学を武器にして備えることができるかは、私たちがこれからどう動くかにかかっている。

forbes.com 原文

翻訳=的場知之/ガリレオ

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