トム・チュー(テスラ中国事業責任者)

テスラにとって唯一の上級副社長であるトム・チューは、マスクの直属の部下として中国での製造やサービスを統括している。マスクがテスラに割く時間が減るなかで、彼は同社の事実上のCOO(最高執行責任者)となっている。
現在44歳のチューは、2020年以降にテスラの収益性の柱となった上海工場の建設と運営を指揮することで、社内での存在感を確立した。彼は、2014年にテスラに入社する以前は、中国のエンジニアリング会社Kaibo Engineering Groupでさまざまな職務に就いていた。
チューは、中国市場におけるEVのサプライチェーンを含む市場に精通した、今後のテスラの競争力と収益性を維持するうえで欠かせない存在であり、後継者として有力な候補だ。
中国出身の彼は、ニュージーランドのオークランド工科大学で学士号を取得後、デューク大学でMBAを取得した。関係者によれば、チューは有能なマネージャーであり、マスクが好むワーカホリック型の人材だという。ただし公の場に姿を現すことは少なく、投資家にはあまり知られていない。
ステラ・リー(BYD副社長)

テスラの競合にあたる中国企業BYDのエグゼクティブ・バイス・プレジデント(執行副社長)で、米国大陸における事業責任者であるステラ・リーも、マスクの後任として説得力のある選択肢となる。
現在55歳の彼女は、急成長中の中南米市場を中心にBYDの国際的な拡大で重要な役割を果たしてきた。リーは、タイムマガジンの世界的な企業幹部のリストにも名を連ねており、アナリストや投資家の間で知られた存在だ。
中国の復旦大学を卒業した彼女は、1996年に創業2年目のBYDにマーケティングマネージャーとして入社した。ロサンゼルスに10年以上住んでいるリーは、カリスマ性とダイナミックな話しぶりで知られ、EV関連の国際会議ではBYDを代表して発言している。
テスラにとって彼女は、社外の人材ではあるが、BYDは中国におけるテスラのバッテリー供給元の1社であり、彼女のBYDとの関係や中国市場への理解は、テスラにとって大きな強みとなる。特にBYDが「神の目」と呼ばれる運転支援テクノロジーを車両に標準搭載する準備を進めている中で、その存在感は増している。