南太平洋に位置するクック諸島は、世界的な旅行ガイドメディアが選ぶ訪れるべき旅行先の1位に選出されるなど、ツーリストにとって人気の目的地だ。一方で、世界中で問題になっているオーバーツーリズムは発生していないとされる。事実、私が2024年9月に現地を訪問した際、ポルトガル・リスボンや京都で見られるような混雑は一切目にしなかった。その理由を探ると、クック諸島の観光産業が一丸となってサステナブル・ツーリズムを推進している事実が浮かび上がってきた。
「Best in Travel」でクック諸島が1位に
クック諸島は、ニュージーランドの北東約3000キロメートルに位置し、15の島々から成る美しい島国だ。国際機関「太平洋諸島センター」のウェブサイトは、約200万平方キロメートルの領海に点在する島々の総面積は237平方キロメートル、日本の徳之島とほぼ同じ広さである――と説明している。人口は1万9200人(2022年)で国内市場は小さい。日本の外務省のウェブサイトによると、近年は観光業が名目GDPの7割程度を占めているという。

クック諸島に世界が注目するきっかけは、世界的な旅行ガイドメディア「ロンリープラネット」が発表する、「Best in Travel」だった。訪れるべき旅行先を選定する権威あるランキングの2022年版で、クック諸島が1位に選ばれたのだ。中でも、ラグーンの美しさで知られるアイツタキ島は多くの人にとり憧れの旅行先となった。