観光事業者たちの「地元愛」が重要
もう一点、クック諸島が「持続可能な観光」を推進している点も、オーバーツーリズムを防ぐ意味で見逃せない。観光局では「お金よりも大切なものがある」とのメッセージを発出している。目先の利益ではなく、自然環境や地元住民の生活環境を守る持続可能な観光を推進しようとの意味だ。観光局は飛行機の座席数や宿泊施設のベッド数を観光事業者に共有しており、観光業界全体が「観光客の数よりも質を重視していこう」との共通認識を持つ。
フィッシャー氏は「自分たちの(座席数やベッド数といった)限界を理解することで、クック諸島の自然や文化的資産を守り、オーバーツーリズムを防ぎ、目的地としての評判を保つための戦略を立てられる。例えば、私たちの文化や環境に触れる高付加価値商品は、多くの旅行者を惹きつけている」と解説する。

事実、クック諸島の宿泊や食事、体験にかかるコストは他の観光地と比べて高い。その分どこに行っても空いているので、満足度も他地域と比して著しく高くなる。持続可能な観光を目指す地域全体の一貫性ある戦略、過密を防ぐためのさまざまな観光資源の掘り起こし(およびコンテンツ制作)、そして価値づけ。これらを実現するためには、観光事業者たちの「地元愛」も重要となる。「私たちの愛するクック諸島の素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたい」という思いが、戦略への協力とホスピタリティーを生む。地元愛とともに、観光事業者が一丸となって全体戦略を実行することが、オーバーツーリズムを防ぐという学びを得た滞在であった。