マレーシアの石油・ガス業界で富を築いたリム・ハン・ウェンが所有するバス事業者、HI Mobility(HIモビリティ)は、新規株式公開(IPO)によって1億1590万リンギット(約39億円)を調達する計画だ。マレーシアとシンガポールを結ぶバス路線の拡充を進める同社は、新たな資金で電動バスを購入する。
このIPOでのHIモビリティの評価額は、6億1000万リンギット(約198億円)とされている。同社株は、3月28日にマレーシア証券取引所に上場する。
HIモビリティは、このIPOで調達した資金をバス55台の購入費用に投じる予定という。そのうちの10台が電動バスになる予定で、充電インフラの整備にもこの資金が活用される。
「当社は、他のマレーシアのバス事業者とは異なり、ジョホールバルとシンガポールを結ぶ越境サービスを提供している」と、HIモビリティCEOのリム・チェンチュンは声明で述べた。マレーシアとシンガポールの国境地帯は、世界で最も交通量の多い陸上国境とされ、1日あたり30万人以上が検問所を通過している。
2国が共同開発を手がけるこのエリアは、経済特区に指定されており、HIモビリティはその恩恵を受けられる。「彼らは23年にわたる事業実績のもと、この地域の交通を支えている」と、今回のIPOで引受人となったメイバンク・インベストメントのCEOを務めるマイケル・オー・ラウは述べた。
550台以上のバスを保有するHIモビリティは、毎月約300万人の乗客を輸送している。IPO目論見書によると、2024年における同社の純利益は前年比73%増の3460万リンギット(約11億2000万円)だった。
HIモビリティは、リムが所有する3社目の上場企業となる。彼は、石油・ガス関連サービス企業のインソン・ホールディングスとICONオフショアの筆頭株主でもある。
ハン・ウェンが妻とともに1984年に設立したインソン・ホールディングスは、当初、運輸・貿易関連の企業だったが、現在は世界有数の石油・ガスサービス企業へと成長した。同社は、2020年に再生可能エネルギー事業に進出し、インドとペルーに太陽光発電施設を保有している。フォーブス・アジアが昨年4月に発表した『マレーシアの富豪ランキング』で45位にランクインした、リムとその家族の保有資産は4億500万ドル(約600億円)とされている。