リモートワークが可能な仕事に就いているなら、働きながら外国に滞在することを考えたことがあるかもしれない。欧州には、国内経済を活性化させるため、欧州連合(EU)域外の国籍を持つリモートワーカーを誘致するための特別なビザ(査証)制度、いわゆる「デジタルノマド」ビザ制度を設けている国がある。各国の移民当局がデジタルノマドビザ発給の可否を決定する重要な要素は、申請者が収入の最低基準を満たしているかどうかだ。
では、欧州で最も障壁の低い選択肢を探るため、デジタルノマドビザの申請に必要とされる収入基準を低く設定している国をいくつか見てみよう。
スペイン 今年から収入基準引き上げも依然ハードルは低い
スペイン政府は2025年からデジタルノマドビザ申請に必要な最低収入の条件を引き上げたことから、同ビザを取得するのが若干難しくなった。これは、同国の2025年の最低賃金が4.4%引き上げられたことに連動する措置だ。
これにより、スペインのデジタルノマドビザ申請に必要とされる最低月収は2763ユーロ(約44万3000円)となった。つまり、申請者は同国の最低賃金である月額1381.33ユーロ(約22万1500円)の2倍以上の収入があることを証明しなければならない。前年より条件が引き上げられたものの、スペインのデジタルノマドビザは依然として他の欧州諸国より比較的ハードルの低い選択肢となっている。
フィンランド 物価は高いが収入要件は欧州で最も低い
フィンランドは物価が高いにもかかわらず、デジタルノマドビザ申請に求められる収入基準がEU諸国の中で最も低い。フィンランドのデジタルノマドビザに相当する個人事業主ビザを取得するには、申請者の月収が1220ユーロ(約19万5600円)以上でなければならない。これはデジタルノマドビザ制度を設けているEU諸国の中でも最も低い条件だ。
フィンランドのデジタルノマドビザは、個人事業を営む非EU市民に向けられている。収入基準が低いことから、適度な収入を維持できるリモートワーカーにとっては、質の高い北欧生活を享受することのできる魅力的な選択肢と言えるだろう。ただし、1つ注意しなければならないのは、フィンランドは物価が高い国として知られていることだ。同国にデジタルノマドビザで滞在するには外食の回数を減らすなど、他の欧州諸国とは異なる行動が必要になるかもしれない。