不健全な恋愛関係と聞くと、怒鳴りあったり、相手を完全にだましたり、あるいは明らかに虐待している場面を思い浮かべがちだ。だが強迫的な行動は容易にとらえられない場合もある。気遣いや愛情、あるいは庇護を装って静かに展開される。あなたは自分を疑い始め「平和を保つ」ために不快な選択を迫られ、なぜなのかわからないまま、まるで薄氷の上を歩いているような気分になるかもしれない。
これは強圧的コントロール(coercive control)の陰湿さを表しており、相手の主体性や自信、現実感を奪うことを目的とした行動パターンだ。必ずしも身体暴力ではなく、一見思いやっているように見える行動の裏に潜んでいることが多い、力や支配のことだ。
オーストラリア家族問題研究所の2023年のレポートによると、強圧的コントロールは、カップルの片方が相手を操る行動を取って相手の自主性を管理したり脅したり、あるいは制限したりする際に起こる。
強圧的コントロールの形態はカップルによって異なるため、特定するのが難しい場合がある。支配しようとする側が取る行動は、パートナーを尾行したり、屈辱を与える目的で特定の服装を強要したりとさまざまだ。
パートナーとの関係に何か違和感があり、それが何なのかはっきりしない場合でも、強圧的コントロールの兆候を認識することが実際に何が起こっているのかを理解するための第一歩となる。
以下のような兆候がみられる場合、パートナーがあなたを支配しようとしていることが疑われる。
1. あなたを孤立させ、支援を受けられないようにしている
強圧的な人はパートナーが自分に依存するように仕向けるためにパートナーを孤立させ、パートナーが耳にするのは自分の意見だけという環境を作る。最初は、ただあなたといっしょにいる時間を増やしたいだけのように見えるかもしれない。友人と出かけているときに「寂しい」と言ったり、あなたの家族の誰かがあなたのことを心から気にかけていないと主張したりする。
だが時間が経つにつれ、あるパターンに気づき始める。つまり、あなたが他人と接するたびに諍いが起こり、あらゆる人付き合いが疑われ、自由な時間を持ちたいと思うことに罪悪感を感じるようになる。パートナーはあなたが親しい人に会いたいと思うことに罪悪感を抱くようにしたり、人付き合いは疲れるものだと大袈裟に言ったり、あるいは特定の人間関係を維持することをはっきりと禁じたりさえするかもしれない。
その目的は、あなたが自分の存在を認めてもらうのをパートナーだけに頼り始めるよう、あなたから周囲のサポートを遠ざけることだ。もし、自分が友人とのつながりを絶ったり、家族を避けたり、自分が他人と過ごすときパートナーがどう反応するか不安に感じたりしていたら、それは強圧的コントロールを受けている可能性がある。