世界最大の家電量販店であるベスト・バイ(ティッカーシンボル:BBY)は、2月1日を期末とする2025年度第4四半期(Q4)決算を発表した。その内容は市場予想を上回ったにもかかわらず、決算発表後に約13%下落するという予想外の落ち込みを経験した。
この下げ幅は、同日に約1.2%下落したS&P500種株価指数よりもかなり大きなものだった。ベスト・バイの株価低迷は、パンデミックによる売上急増の後、厳しい競争に直面している家電小売セクターの課題を浮き彫りにしている。インフレ率の上昇と関税による値上げの可能性が、この業界の不透明感に拍車をかけ、その見通しに影を落としている。同社が複雑かつ急速に進化する環境を乗り切れるかどうかを判断する投資家にとって、小売業界の収益性と消費者需要に関する懸念は重要な要素となっている。
ベスト・バイの2025年度Q4決算における収益は、前年同期比5%減の139億5000万ドル(約2兆600億円)だった。EPS(1株あたりの純利益)は、前年同期が2.12ドルだったのに対し、今期は0.54ドルと大幅に減少している。しかし、現金支出を伴わない、のれんの減損費用とその他のリストラ費用を調整した後のEPSは、2.58ドルとなっている。同決算の特筆すべき点は、既存店売上高(2024年度との日数の違いを調整後)が0.5%増加したことだ。前年同期は4.8%減少であった。これは、横ばい、もしくは3%減の範囲としていたベスト・バイによる業績見通しを上回るものだった。また、米国市場では、四半期の既存店売上高が前年同期比0.2%増となるなど、同市場の復調を示している。
過去4年間におけるベスト・バイ株の年間リターンは、S&P500と比べてもかなり低い。同株の年間リターンは、2021年に4%、2022年にマイナス17%、2023年に3%、2024年に14%であった。
関税がベスト・バイに与える影響
メキシコとカナダからの輸入品に対する25%の関税と、中国製品に対する関税が倍増し、20%となることは、ベスト・バイの経営に大きな影響を与えると予想される。中国とメキシコは同社にとっての2大供給源であり、それぞれ同社製品の約55%と20%を占めているため、関税の引き上げは同社にとってコスト増となる可能性が高い。ベスト・バイの見通しでも、同社が取引するベンダーが関税コストの一部を転嫁し、ベスト・バイでの販売価格も上昇すると予測されている。注目すべきは、同社製品のうち直輸入品が占める割合はわずか2~3%であることだ。
ベスト・バイの在庫サイクルが約6週間であることから、価格変更による影響が現れるのは主に2026年度の第2四半期から第4四半期になると同社は予想している。従って投資家は、関税の引き上げと、それに伴う物価上昇の影響が本格化するにつれ、今後同社の業績に悪影響が現れることを覚悟しておかなければならない。