2018年に入ると、クランブルは新たなフランチャイズ店舗の募集を開始したが、当初はユタ州内に限定していた。州外への拡大には慎重だったが、ネバダ州の夫婦がラスベガスで店舗を開きたいと持ちかけたことが転機となった。
「批評家たちは『甘いものを食べるのはユタ州だけだ』とか、『温かいクッキーは、暑い地域では売れない』とか言っていた。それに、日曜定休のままではユタ州以外では通用しないとも言われた」とマクゴーワンは語る。
しかし、ラスベガスの店舗もユタ州の店舗と同じように成功を収めた。「この時点で、市場を獲得すべきだと確信した。そして、店舗開設の問い合わせに本格的に対応し始めたんだ」とヘムズリーは言う。
創業4年で売上70億円
2018年、クランブルは最初の通年営業を迎え、16店舗からの収益は60万ドル(約9000万円)に達した。その大部分は、店舗売上の8%をロイヤリティとして受け取る形で得たものだった。翌年には55店舗に拡大し、収益は430万ドル(約6億4400万円)に成長。2021年には326店舗まで増え、収益は4700万ドル(約70億円)に達した。
クランブルの成長は、米国のその時期の「シュガーブーム」と呼ばれるトレンドに後押しされたものだった。同時期に、インソムニア・クッキーズは130店舗から210店舗に拡大し、売上は9700万ドル(約145億円)から1億5800万ドル(約236億円)へと伸びていた。また、ラスベガス発のカップケーキ専門店、Nothing Bundt Cakes(ナッシング・バント・ケークス)も240店舗から424店舗に拡大し、売上が2億6500万ドル(約397億円)から5億4400万ドル(約810億円)へ伸びていた。
コロナ禍でさらに急拡大
新型コロナウイルスのパンデミックとTikTokの急激な普及が、クランブルを単なる話題のクッキーブランドからバイラルな現象へと変えた。巨大なクッキーを食べる動画は、「美味しそう」と言われたり「気持ち悪い」と言われたりしたが、とにかく人々は目を離すことができなくなった。クランブルは2022年に店舗数を倍以上に増やして689店舗に広げ、売上は1億1000万ドル(約164億円)に達した。
「これほど急成長したチェーンを、私はほかに知らない」とシカゴを拠点とする食品業界のコンサルティング会社テクノミックのケビン・シンプフは語る。「ただし、クッキーだけしか売らないというのは、ビジネスモデルとしてはリスクが大きい。真新しさがあるうちはいいが、それが薄れたら厳しくなる」
そのリスクはすでに現実のものとなりつつある。クランブルの店舗数は、2023年末には970店舗に達したが、初めて閉店する店舗も出た。この年には、7店舗が閉鎖されたが、マクゴーワンはその理由を「小規模な都市に出店しすぎたため」と説明した。
クランブルはまた、2024年初頭に初めてクッキー以外のデザートを導入した。ケーキやパイ、プリンなどを加えることで多様化を図ったのだ。また、拡大ペースを落とし、2024年は1071店舗で年を終えた。