海外

2025.03.06 15:00

創業8年で「評価額3000億円」、米クランブル・クッキーズの成功物語

Crumbl Cookies(Charley Gallay/Getty Images for The Colton Underwood Legacy Foundation)

初めてアメリカを訪れたのは、モルモン教の宣教師としてラスベガスに派遣されたときだった。その数年後の2003年、彼はユタ州に移住し、友人宅の床で6カ月間寝泊まりしながら独学でウェブ開発を学んだ。

その後、ブリガム・ヤング大学向けのSNSサイトや家系図のウェブサイトを立ち上げ、2011年に家系図サイトのAncestry.com(アンセストリードットコム)に事業を売却した。マクゴーワンは、同社のモバイル製品ディレクターとして数年間勤務した。

一方、マクゴーワンの妻の親戚であるヘムズリーは、2015年にユタ州立大学に入学した直後にアパレルブランドを立ち上げ、投資家としてマクゴーワンに声をかけた。しかし、そのビジネスは短命に終わり、ヘムズリーが在学中に倒産した。

「うまくいかなかった。それがビジネスというものだ」とマクゴーワンは言う。「でも僕は、ヘムズリーの人間性に惹かれたから、『いつか一緒にビジネスをしよう』と言ったんだ」

2017年、ヘムズリーは大学のキャンパスでフードデリバリーのDoorDash(ドアダッシュ)の広告を目にし、温かいクッキーを地元の家庭に直接届けるビジネスを思いついた。当時は、この分野の大手であるInsomnia Cookies(インソムニア・クッキーズ)が、すでに東海岸の大学キャンパス向けにクッキーの宅配を行っていた。しかし、インソムニアはまだユタ州には進出していなかった。

マクゴーワンとヘムズリーは、製菓業界の経験が一切なかったが、クッキーの会社を作ることに決めた。

モルモン教徒の伝統

「ユタ州にはベーカリー文化が根付いている。モルモン文化だからね」とヘムズリーは言う。「モルモン教徒にも嗜好品はあるが、それは大麻やアルコールではなく、砂糖やソーダなんだ。近所の人と甘い焼き菓子を分け合うのが普通なんだ」

2人はチョコチップクッキー1種類に絞り、ヘムズリーの実家のキッチンで試作を繰り返した。YouTubeのチュートリアル動画やユタ州のパン職人たちから学びながら、試行錯誤を重ねた。ヘムズリーが選んだ最初の店舗は、地元の空き店舗だった。そこは6カ月後に取り壊される予定のクレープショップだった。

友人や家族に試作品を食べてもらったが、最初は失敗続きだった。「クッキーの生地を大量に廃棄していたせいで、死体を処分していると勘違いされるほどだった」とヘムズリーは振り返る。そして2017年9月、ついに看板商品のミルクチョコレートチップ・クッキーを完成させた。「最初から大きなクッキーにこだわった。大きければ、みんなで分け合えるからだ」とマクゴーワンは言う。

最初の店舗を開く前に、2人は、クランブルのインスタ映えするピンクの箱を強調したビデオや写真をSNSに投稿してプロモーションを行った。その効果は絶大で、ヘムズリー自身も反響の大きさに圧倒されたという。「最初の数週間は本当に大変だった」と彼は語る。「忙しすぎて対応しきれず、両親に店を手伝いに来てもらうよう頼まなければならなかった。両親はもちろん嫌がらずに店に来てくれたよ」

開業初月から黒字に

クランブルは開業初月から黒字を達成し、数カ月後にはヘムズリーの両親がユタ州バウンティフルに最初のフランチャイズ店舗を開いた。この2号店の開業に合わせて、ヘムズリーとマクゴーワンは毎週日曜日(クランブルが唯一休業する日)にオンラインで発表する「週替わりフレーバー」のメニューを導入した。

「最初のフランチャイズ店ができたときは本当に緊張した」とマクゴーワンは振り返る。「オーナーが損をするんじゃないかと心配で、カウンターを作るために自分でハンマーと釘を持って店に入ったよ。彼らに損をさせるわけにはいかないからね」

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編集=上田裕資

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