少なくとも言葉の上では、これほど中国に厳しい態度をとった米大統領はいない。大統領選挙の期間中も、トランプは新型コロナウイルスの問題から経済的混乱、さらにはメキシコでのフェンタニル生産への黙認までも中国のせいにし、中国を政治上の悪役として扱ってきた。
しかし注目すべきは、トランプが地政学的な視点から中国を批判していない点だ。南シナ海への言及はなく、フィリピン海軍との中国のやり取りを巡る警告もない。特に顕著なのは、米国で通常は超党派の支持を得ている台湾防衛について、擁護の姿勢がまったく見られないことである。むしろトランプの台湾への言及はやや軽視気味で、「我々は保険会社と変わらない。台湾は我々に何も与えていない。台湾は米国から9500マイル(約1万5300キロ)離れているが、中国からは68マイル(約109.4キロ)しか離れていない」と述べている。
さらにトランプは、習近平をたびたび称賛している。トランプは「習主席とは常にすばらしい関係を保ってきました。この先も中国とうまくやっていきたいと思います」と述べ、さらに「私は習主席がとても好きです。以前からずっと彼を好きでした」と個人的な好意も示している。
そして、直接的な二国間問題以外でも、トランプは中国に2つの大きな「贈り物」を与えている。第一に、中国の影響力を抑制する可能性のあったアジアでの通商イニシアチブから手を引いたこと。第二に、中国がロシアを経済的・政治的に支援している事実を批判せず、キッシンジャーやニクソンの時代から米国外交政策の要としてきた「ロシアと中国の連携を阻止する」路線に反する立場をとっていることだ。
そのような姿勢を見せながらも、トランプは一見すると態度を翻し、当初は中国製品に20%の関税を課した上、(世界全体を対象とする措置の一環として)中国産の鉄鋼とアルミニウムに25%の関税をかけるとした。
中国としても対抗せざるを得ず、米国から輸入する石炭や液化天然ガスに15%、原油や農業機械、大型エンジン車に10%の関税を課した。また、グーグルに対する独占禁止調査を開始し、米国のファッションブランドであるトミーヒルフィガーやカルバン・クラインを所有するPVHを「信頼できない企業リスト」に追加した。さらに、防衛やクリーンエネルギーなどの分野で重要な5種類の希少金属について輸出を制限する措置を取った。