では、これらの経緯からどのような結論が導かれるのだろうか。
・トランプは大言壮語や奇抜さ、対立を管理の手段として好む。彼は「悪役」を演じることを楽しんでおり、アメとムチのうちムチを多用する傾向がある
・彼は対立を生む問題やスケープゴートを喜んで利用する。行動に移る前にまず自国の支持基盤に訴えるやり方をとる
・外交政策は、トランプにとってはほぼ国内政治の延長である。アメリカが世界で果たす役割よりも、通商問題が政策の中心だ。国際的な国境の一方的変更に対抗したり、強引な拡張を押し返したりする意欲はあまり示していない
以上のような対中アプローチから、予想される展開は次のとおりだ。
・中国は経済問題においていくつかの小規模な譲歩を宣言し、市場開放や投資へのコミットメントを表明する可能性がある。その規模はトランプが「勝利」を高らかに宣言するには十分大きく、中国が「もともとやるつもりだったごく小さな措置」と説明できる程度に小さいものになるだろう
・台湾問題の温度は下がるとみられる。トランプは「米国は台湾独立を促進するつもりはないが、現状が武力で変えられるのは望まない」と表明し、中国は「台湾は中国の一部であり、いずれは自国の統治下に組み込む運命にある」という従来の主張を改めて表明するだろう
・TikTokやテスラなど、潜在的に敏感な投資や企業活動は保留状態になりつつ、事業自体は継続される見込みだ。管理やデータプライバシーに関する調整は必要かもしれないが、全面的な排除には至らないだろう。
・トランプは中国によるロシア支援を問題視しない。これを重視していないためだ
・トランプが「勝利」を宣言した後、中国は約束の履行を大幅に下回っても大事にはならないと考えるだろう。たとえば中国が合意の90%、80%、あるいは70%しか果たさなくても、トランプは事実の正確性にかかわらず「成功」を主張する可能性が高い。中国はその点を理解しており、最小限の譲歩だけ行うだろう。トランプと習近平の双方が「問題解決」を宣言することは、双方にとって得策だと考えられる。