もうひとつ重要な点は、ウクライナ軍が保有する米国製JDAM、フランス製AASM両滑空爆弾という高性能弾薬の場合、GPS誘導システムに加えて補助の慣性航法システム(INS)も搭載していることだ。慣性航法システムは外部の情報やシステムに依存しない自己完結型システムなので、ジャミングの影響も受けない。
実際、ウクライナ空軍や米空軍はそれぞれの爆撃作戦で、バックアップの慣性航法システムも搭載するGPS誘導弾で敵のGPSジャマーを撃破している。2003年、米空軍機がイラク軍のGPSジャマーをGPS誘導弾で爆撃したあと、米空軍のビクター・レニュアート少将(当時)は、イラク側のGPSジャマーが「われわれに何の影響も及ぼさなかったと言えるのは喜ばしいことだ」と語っている。
対照的に、ロシアの慣性誘導バックアップは精度が低い傾向にある。慣性航法システムは、その弾薬の方向や高度、速度を内部で計算して軌道を維持する複雑なシステムだ。アナリストのマーク・シュナイダーは2022年、米海軍の専門誌「プロシーディングス」に寄稿した論考で、ロシア軍のミサイルは実際の精度がかなり低いとみられることを論じている。
ウクライナ軍は、味方への影響以上に敵に対する効果が大きい妨害電波で空中を満たすことで、戦場でロシア軍が得ていた大きな優位性のひとつを消し去ったのかもしれない。Fighterbomberは、ロシア軍の指揮官は「現実を認める」べきだとし、「未来は自律的なINS(慣性航法システム)にある」とも記している。
だが、慣性航法システムに関してはウクライナが優位に立っている。