ロシア軍の滑空爆弾は、米国のGPS(全地球測位システム)ほどの精度はなく、カバー範囲も狭いロシアの測位衛星システム「GLONASS(グロナス)」との通信を妨げられている。空中での軌道修正のために安定した接続が確保できなければ、滑空爆弾は迷走し、無害な平原などに落下することが多くなる。
Fighterbomberによれば、ウクライナ側の「高価値の目標はすべて電子戦によって確実にカバーされている」という。Fighterbomberは、1つの目標に命中させるには滑空爆弾が8〜16発必要になるかもしれないとも言及している。滑空爆弾自体は1発2万5000ドル(約370万円)程度で精密弾薬としては安価だが、滑空爆弾を一度に2発か4発投下するスホーイはけっして安いものではない。
作戦機の配備数が1000機かそこらで、3年あまりの戦いで120機ほどを失っているロシア空軍にとって、1つの目標を攻撃するのに爆撃機4機を投入するのは危険だし、効率も悪い。
ウクライナ側による激しいジャミング(電波妨害)のために、ロシア側ではドローン(無人機)も飛べなくなることが多い。ロシア軍はやむを得ず、より高価な光ファイバードローンを使うようになっている。このタイプのドローンは無線でなく細くて長い光ファイバーケーブル経由で通信するので、ジャミングを受けない。
ジャミングは、ウクライナ空軍が高価で狙われやすい防空システムで達成しあぐねていたことを成し遂げていると言える。旧ソ連製のS-300や西側製のパトリオット、SAMP/Tといった地対空ミサイルシステムは、数十km離れた地点からロシア軍機を迎撃できるものの、数が少なすぎるためウクライナの前線や都市を完全に守ることはできない。
もちろん、ロシア側もジャミングを行っているが、ウクライナ側ほどの効果はあげていない。ロシア製のジャマーは概して作りが粗雑で、性能も良くない。