宇宙

2025.02.28 11:00

月面着陸のカウントダウンが始まる 3月に米国2機、日本は5月下旬

月周回軌道に入った「ブルーゴースト」からの画像。2月18日撮影(C)FireflyAerospace

3月2日の着陸を予定する「ブルーゴースト」は、NASAから委託された10個のペイロードを月面に届ける。その契約金は9330万ドル(約140億円)。ペイロードの総質量は94kgなので、輸送費は1kg当たり約99万ドル(1億4900万円)となる。

それら積載物のひとつに月面サンプル収集装置「LPV」(ルナー・プラネット・バキューム)が含まれる。ブルーゴーストの機体底部に固定されたこのマシンからは掃除機のような吸い取り口が伸び、そこから加圧ガスを噴出することでレゴリス(月の砂)を巻き上げて収集する。サンプルは機体内でふるいにかけた上で撮影され、そのデータはリアルタイムで地球に転送される。

水の氷は地下だけでなく、レゴリスに付着している可能性がある。LPVはそれを観察するとともに、レゴリスの組成を分析することで、月面基地建設の素材として活用できるかを調査する。このLPVはジェフ・ベゾス率いるブルーオリジン社の子会社、ハニービー・ロボティクスが開発したものだ。

月の凍土を掘削する

左がIM社の「アテナ」。その側面にはオレンジ色の掘削機「プライム1」を搭載。月面にはマイクロ・ローバー「MAPP」が走行し、右上枠には飛翔する「マイクロノヴァホッパー」が描かれている(C)Intuitive Machines
左がIM社の「アテナ」。その側面にはオレンジ色の掘削機「プライム1」を搭載。月面にはマイクロ・ローバー「MAPP」が走行し、右上枠には飛翔する「マイクロノヴァホッパー」が描かれている(C)Intuitive Machines

IM社のアテナが着陸する月南極には、水の氷が多く分布すると予想される。アテナは全長4.7m、質量2120kgの輸送機だが、その機体側面にはNASAの氷掘削機「プライム1」が搭載されている。アテナが着陸すると、プライム1から月面に向かってドリルが伸び、異なる深度の土壌を最大3フィート(約90cm)まで掘削し、そのサンプルを採取して分析する。NASAはプライム1の輸送量として、IM社と4700万ドル(70億5000万円)の契約を交わしている。

また、アテナにはIM社が自社開発した「マイクロノヴァホッパー」も搭載されている。全高98cm、質量39kgの同機は、ヒドラジンを燃料とするロケット推進機を持ち、その噴射によって最大25kmの距離を飛び跳ねながら移動しつつ、着陸地点周辺に点在するクレーター内の永久影領域で水の氷を探す。

その他にもアテナには2台のマイクロ・ローバーが搭載されており、その1機は日本のダイモン社のマイクロローバー「YAOKI」。手のひらサイズのわずか498gの同機は、左右の車輪をクロールしながらレゴリスの地表を進み、ライトで照らしながら地表を撮影する。

もう1機の「MAPP」(ルナ・アウトポスト社、全長45cm)は、秒速10cmで走行しながら3D画像や動画を撮影し、そのデータをもとに月面地図をMAPPが自律的に作成する。

ispaceの月着陸機「レジリエンス」と小型月面探査車「テネシアス」Ⓒispace
ispaceの月着陸機「レジリエンス」と小型月面探査車「テネシアス」(c)ispace

ispaceのレジリエンスは、全高2.3m、最大直径2.6mの機体であり、その内部にはispaceが自社開発した小型月面探査車「テネシアス」のほか、民間企業や政府機関などから委託された5種類のペイロードを搭載する。そのひとつ、高砂熱学工業(新宿区)の「月面用水電解装置」は、宇宙環境で水を電気分解するための実験装置であり、将来の月資源活用を担う技術を実証する。

編集=安井克至

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