宇宙

2025.02.28 11:00

月面着陸のカウントダウンが始まる 3月に米国2機、日本は5月下旬

月周回軌道に入った「ブルーゴースト」からの画像。2月18日撮影(C)FireflyAerospace

日本の「レジリエンス」は5月下旬以降

ispaceの「レジリエンス」の軌道図。まずは地球周回軌道(オレンジ)に入り、月に出会ったところでフライバイを行い低エネルギー遷移軌道(ピンク)へ。そのまま月の公転軌道に接近し、月の重力圏に入る(C)ispace
ispaceの「レジリエンス」の軌道図。まずは地球周回軌道(オレンジ)に入り、月に出会ったところでフライバイを行い低エネルギー遷移軌道(ピンク)へ。そのまま月の公転軌道に接近し、月の重力圏に入る(C)ispace

3機目は日本のispace(アイスペース)社の「レジリエンス」。その機名は「強靭(きょうじん)」を意味する。

2023年4月に行われた同型機によるミッション1では、着陸降下中に想定外の崖に出くわしたことが契機となり、燃料が尽きて着陸に失敗した。ただし、今回のミッションの着陸予定地は「氷の海」にある平地であることから着陸成功への期待度が高い。この地は地球から見ると月の北極近くに見える。

レジリエンスは、ブルーゴーストと同じファルコン9ロケットに搭載され、1月15日に打ち上げられた。両機は27分の間隔を開けて第2段ロケットからリリースされたが、ブルーゴーストが30日間で月へ到達したのに対し、レジリエンスは約4カ月かかる。これだけのタイムラグがあるのは、レジリエンスが低エネルギー遷移軌道と呼ばれる省燃費な軌道を採用しているためだ。月の重力を利用してフライバイを行うこの軌道の採用により、レジリエンスは燃料を大幅に節約でき、その搭載量を低減できるため、ペイロード(積載量)を増やすことができる。

レジリエンスは2月15日に月フライバイを完了し、いまは月に向かう軌道(低エネルギー遷移軌道)にある。5月初旬には月の重力圏に入り、その約2週間後の5月下旬から6月上旬の間に月面着陸を試みる予定だ。この着陸に成功すれば、レジリエンスは日本初、強いてはアジア初の民間月着陸機として記録される。

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トランプとイーロン

2月15日、「レジリエンス」が月フライバイを行った際、月表面から高度8400kmから撮影(C)ispace
2月15日、「レジリエンス」が月フライバイを行った際、月表面からの高度8400kmにて撮影(C)ispace

トランプ大統領とイーロン・マスク氏がアルテミス計画を大幅に修正しようとしている。現時点ではヒトが月面に降りるアルテミス3計画は2027年に予定されているが、有人月着陸機に選定されているスペースX社のスターシップの開発遅延、主要ロケットであるSLSの極端な予算超過、オリオン宇宙船の熱シールドの耐久性、さらにはNASA自体の財政など、噴出する諸問題を理由に同計画はさらに後ろ倒しされる可能性がある。

イーロン氏は月よりも火星を優先したいと考えているが、アルテミス計画自体がなくなることはない。おそらく月と火星に投入する予算配分がシフトされるに留まるはずであり、トランプはその在任中である2029年までに、ヒトを再び月に立たせようとするのではないか。であれば、それまでに月で果たすべき課題が山積している。

月面開拓の初動では、「水の氷」の発見と確保が優先される。なぜなら月面に水から成る氷さえ見つかれば、それを溶かし、水を電気分解することで、酸素と水素が得られるからだ。水と酸素はクルーの月面滞在を容易にし、水素と酸素はロケットの推進剤や、有人探査ローバーの動力源となる。

掃除機で「水の氷」を探す

ファイアフライ社の「ブルーゴースト」月面に着陸した際のイメージ図(C)Firefly Aerospace
ファイアフライ社の「ブルーゴースト」。月面に着陸した際のイメージ図(C)Firefly Aerospace

月の「水の氷」は、遠隔探査によってデータからその存在が確実視されているが、いまだ「採取」されたことはなく、実現すれば今世紀最大級の偉業となる。

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編集=安井克至

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