5社に共通している点は、リスクを取りながら思い切ったビジネスモデルの転換を実現してきたこと、成長のために果敢なM&A戦略を駆使していること、名実伴うグローバル化を進めてきたこと、流行の直訳経営学に慌てて飛びつくことなく、人間と組織の「暗黙知」を拡大充実し続けていることにある。先頃亡くなった経営学の泰斗、野中郁次郎先生が提唱された組織的知識創造型の二項動態経営を目の当たりにする観がある。
5社ともに、高齢者を事実上のトップとしながらも、挑戦し、意欲的で革新に富み、成長を続けるという「若さ」の美徳を備えているのではないか。
反対に、日本ではスタートアップがなかなか育たないといわれる。国を挙げて若い彼らをバックアップしながらなぜなのか。理由は単純ではない。だが、その要因のひとつに「若さを欠いた若さ」があるのかもしれない。
中国人の友人の口癖を思い浮かべる。「若者? それは明日の老人のことさ」
その含意は、若者が「若き老人」に学ぶところも多い、というところにあるのではないだろうか。
川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。