平山:4月から大阪・関西万博が始まることもあり、現在、空飛ぶ車に注目が集まっています。戸谷さんはドローン分野の方で、御社では物流や点検などの産業用ドローンが主力かと思います。しかし、ドローンの実証実験がたくさん行われているものの、なかなか実装につながっていなかったり、積載量が少なかったりという現状があります。そうしたなかで、お考えや現状の動きなどについてお話しいただけますか。
戸谷:当社は「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」をスタートさせています。これは「空と道がつながる愛知モデル2030」を掲げ、2030年には名古屋駅前で空飛ぶ車が道も走る、道を走っているレベル4の自動運転が空で展開される。つまり3次元の交通環境を作ることを目指してやっています。
そのなかで最も重要なのが安全な機体を作ることで、そのひとつを第一種型式認証で今やっております。今まで5年間運用してきた機体を、2022年11月に国土交通省航空局にやっと受理されました。すでに2年半経過していますが、これが認証されれば日本で初めて第一種型式認証45kgの機体が生まれます。開発は当社、製造はJALエンジニアリングが行っています。
それができてようやく産業になるかなと。まだ産業にはなっていない。ドローンでの輸送はまだ当社の機体で(最大積載量)20kg。輸送の最低ラインは軽トラなんです。最大積載量350kgぐらいにならないと、ちゃんとした輸送とは言えません。今はオンライン診療とオンライン服薬指導を合わせて薬を運んだり、血液製剤なども運べるよう考えています。また、上空だとなかなかうまく通信がつながらないという課題もあります。

「次世代Suica」で広がるデータ活用の可能性
平山:これまで人の移動が減っていくかもしれないけれども、色々な機会を提供していく、より便利にしていくことでその頻度は増えるんじゃないというお話があったり、そのなかでデータをつないでいくことで新しい価値をどう提供していくかというところがポイントだと思って伺っていました。
ここから今回のテーマでもある「データか人か体験か」に関係する部分について、深掘っていきます。鉄道会社や自動車会社はこれまでさまざまなデータを活用されていて、効率的な人や物の輸送をまちづくりに生かされていると思います。実際にどうデータが使われているのか、またデータ活用における課題や、それがどう改善されると未来のモビリティにポジティブなインパクトを与えるのか、伊藤さんと岩田さんに伺いたいです。
岩田:他社様全てがどうかは分からないですが、鉄道会社はおそらく最近までどちらかというとマスのことしか考えていなくて、効率的なダイヤをどうひくのか、どこに駅を作り、どこに住宅地を作ればいいのかというようなデータは結構取って使っていたと思います。ただ、個人を捕捉できるようなOne to Oneマーケティングのようなものをやり始めたのは最近だと思いますし、会員規則や会社のポリシーにもよると思います。
あとは当社だけの話で言うと、One to Oneというよりも外部データとの連携みたいなことができ始めましたので、当社がもつデータと他の企業様がもつデータ、行政がもつデータとを掛け合わせたプロジェクトなんかも走ったりしています。
昨年12月にJR東日本さんが発表された次世代のSuicaがやっぱりこれからデータに関する話題の中心になってくると思いますが、結局改札とは何なんだという話になるわけです。
例えば中国で行われているような顔認証システムを導入して、どの駅で乗って降りたというデータをクラウドで飛ばして、後で精算できれば、切符を買うという行為ですとか、そのために足止めされることが無くなって、顧客体験が変わります。そういったことが今後、日本でも起きてくる可能性が考えられます。そこに鉄道会社はどう向き合っていくのか。