河野氏によると、2025年のAFEELAのプロトタイプは2024年モデルと外見はほぼ変わらないように見えるが、実のところはキャビン以外のすべての要素を変更しているという。さらに河野氏は「今にも動き出しそうなクルマの魅力」を加えることにも注力したと振り返る。
「本来、自動車メーカーが『走るクルマ』をデザインする時には足もとのタイヤを出発点として考えるものです。AFEELAは開発当初からあえてそこを突き詰めず自由にデザインしてきました。発売を間近に控えて、2025年のプロトタイプモデルでは走るクルマとして踏ん張った時の安定感や、足まわりの『色気』の要素を加えています」(河野氏)
AFEELAの公式YouTubeチャンネルには、AFEELA 1がテストコースを滑走するムービーが公開されている。動画を視聴すると、石井氏と河野氏が揃って口にするAFEELA 1の緊張感と色気が伝わってくるはずだ。
Unreal Engineで描く3Dマップにはたくさんの可能性が詰まっている
小松氏はソニー・ホンダモビリティが新設したUXプラットフォームデザイン課のシニアマネジャーだ。これまでのプロトタイプではシンプルにビジュアル的なデザインを追求してきたが、同社初のプロダクトになるAFEELA 1では先進性と安全性、そして走るクルマらしさを意識しながらユーザーインターフェイスの成熟度もさらに高めている。
筆者は特にAFEELAらしさが強く感じられる2つの機能に注目した。1つは3Dマップだ。
AFEELA 1のユーザー体験を表すコンセプトムービーには、小松氏のチームが開発を進める3Dマップのイメージも紹介されている。クルマが走行を始めると、広いフロントスクリーンには運転席から見た右側に俯瞰視点の3Dマップが表示され、ドライバー正面にはAFEELA 1に搭載する多種センサーの認識する車外の状況がリアルタイムに可視化される。
「従前の3Dマップは、サービスプロバイダーから提供される地図データがそのまま表示されることがほとんどです。AFEELA 1の3DマップではEpic GamesのゲームエンジンであるUnreal Engineを使って、地図データに情報を付加し、独自で表現を加工できる仕組みを設けています。移動体験に必要なさまざまな情報をリアルタイムにレンダリングすることを目指しています」(小松氏)
描画精度の高いUnreal Engineを採用する理由の1つは、ドライバーが豊かな気持ちになれるよう視覚的な表現力を高める狙いがある。AFEELA 1ではもう一歩踏み込んだ3Dマップの価値を提案する。それは車両に搭載する多種センサーとAIに連動する、先進的な運転支援(ADAS)システムのユーザーインターフェイスを追加することだ。小松氏が機能の特徴を次のように説明する。