大阪で目撃した独特のガチ中華
もともと大阪でガチ中華の店が多数出店されているのは、難波から日本橋にかけてで、特に道頓堀の北側にある宗右衛門町通り周辺だった。ところが、ここ数年、集中地区が東へと移っているようだ。それは堺筋の東側の島之内界隈で、コロナ禍頃からガチ中華の店が急増している。島之内界隈で特徴的なのは、東京の池袋や上野でも見られるが、一棟にガチ中華の店が大半を占める飲食ビルがいくつもあることだ。おそらくビルごと中国の人の所有となっているのではないかと思われる。
また、今回数カ月ぶりに訪れたが、同じ場所に以前と違う店があり、短期間で業態が変わっているケースがいくつもあったこと。東京でもそうだが、とにかく回転が早い。以前こうなる理由について書いたが、彼らは新しい店を始めても、ダメだと思ったら、半年もしないうちに断念して業態変更することをいとわないのだ。中国の現地風の色合いが濃い、食堂風のこぢんまりした店が多いことも特徴だ。たとえば、「牡丹園 老北京炸醤麺」(大阪市中央区島之内2-11-13)という北京のご当地麺の専門店がそうだ。
炸醤麺は、日本でもおなじみの汁なし肉ミソかけ麺(ジャージャー麺)のことだ。これが韓国に行くと、甘くて真っ黒な肉ミソがかかっているチャジャンミョンになるが、この店では北京で食べたのと同様、具材と麺が皿に分けられ、醤(ジャン)が別の小皿にのっていた。
その醤はとてもしょっぱくて、正直あまり身体によくなさそうな強い塩加減が特徴の、まさに北京の炸醤麺だった。それにしても、炸醤麺をほぼ唯一の看板メニューとしている店が日本でやっていけるのだろうかといぶかしく思ってしまった。話を聞くと、同店は北京から来た調理人の男性と遼寧省盤錦出身の女性が切り盛りしていた。その女性は日本語が上手で、実は本業は別の仕事なのだが、この店を手伝っているのだそうだ。
この店がオープンしたのは1年ほど前のこと。まさに中国経済の低迷から海外に活動の場を移す「新移民」である“潤”店主のケースであることがわかるのだ。
「安徽牛肉板面」(大阪市中央区島之内2-10-9)という超レアなご当地麺屋もあった。筆者も初めて見る中国安徽省の醤油スープの幅平麺で、話を聞くと、オーナーは安徽省ではなく、山東省の出身だった。
「なぜこの店を始めたのか」と尋ねると「このあたりは中国人の店が多く、競争が激しいので、まだ誰もやっていない料理をやりたかった」からだそうで、日本でこの麺を出す唯一の店だという。これらの店は、どう考えても日本人客を対象とは考えていないことがわかる。
島之内は難波と比べると、比較的静かなエリアで、住宅街とまでは言えないかもしれないが、少なくとも繁華街ではない。ところが、これまで述べたとおり、中国のローカルなガチ中華が多数出店されているほか、中国人経営と思われる免税店やホテル、民泊物件などが多く見られる。
これらいわゆるインバウンドビジネスは、2010年代以降、彼らのメイン事業でもあり、そのかたわらで飲食店を営んでいるというのが実態だろう。中国人というのは、飲食をどうしてもやってみたい人たちなのだ。
その意味では、東京ではあまり見かけないケースとして、明らかに外国人客向けホテルの地下にガチ中華の店がテナントで入っているのを何軒か見つけた。これらもおそらく中国系だろう。


