大阪で目撃した独特のガチ中華
もともと大阪でガチ中華の店が多数出店されているのは、難波から日本橋にかけてで、特に道頓堀の北側にある宗右衛門町通り周辺だった。ところが、ここ数年、集中地区が東へと移っているようだ。それは堺筋の東側の島之内界隈で、コロナ禍頃からガチ中華の店が急増している。島之内界隈で特徴的なのは、東京の池袋や上野でも見られるが、一棟にガチ中華の店が大半を占める飲食ビルがいくつもあることだ。おそらくビルごと中国の人の所有となっているのではないかと思われる。

中国の現地風の色合いが濃い、食堂風のこぢんまりした店が多いことも特徴だ。たとえば、「牡丹園 老北京炸醤麺」(大阪市中央区島之内2-11-13)という北京のご当地麺の専門店がそうだ。


それにしても、炸醤麺をほぼ唯一の看板メニューとしている店が日本でやっていけるのだろうかといぶかしく思ってしまった。話を聞くと、同店は北京から来た調理人の男性と遼寧省盤錦出身の女性が切り盛りしていた。その女性は日本語が上手で、実は本業は別の仕事なのだが、この店を手伝っているのだそうだ。
この店がオープンしたのは1年ほど前のこと。まさに中国経済の低迷から海外に活動の場を移す「新移民」である“潤”店主のケースであることがわかるのだ。
「安徽牛肉板面」(大阪市中央区島之内2-10-9)という超レアなご当地麺屋もあった。筆者も初めて見る中国安徽省の醤油スープの幅平麺で、話を聞くと、オーナーは安徽省ではなく、山東省の出身だった。


これらの店は、どう考えても日本人客を対象とは考えていないことがわかる。
島之内は難波と比べると、比較的静かなエリアで、住宅街とまでは言えないかもしれないが、少なくとも繁華街ではない。ところが、これまで述べたとおり、中国のローカルなガチ中華が多数出店されているほか、中国人経営と思われる免税店やホテル、民泊物件などが多く見られる。
これらいわゆるインバウンドビジネスは、2010年代以降、彼らのメイン事業でもあり、そのかたわらで飲食店を営んでいるというのが実態だろう。中国人というのは、飲食をどうしてもやってみたい人たちなのだ。
その意味では、東京ではあまり見かけないケースとして、明らかに外国人客向けホテルの地下にガチ中華の店がテナントで入っているのを何軒か見つけた。これらもおそらく中国系だろう。