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サイエンス

2025.01.27 18:00

地球上で「最も寒い村」で暮らす知恵と身体の進化

Piu_Piu / Shutterstock

オイミャコンの人々のサバイバル力は、生物学的特性だけではない

オイミャコンで生き抜いていくには、生物学的な要素と同じくらい、創意工夫や伝統が重要な役割を果たしている。

何より重要なのは暖房だ。この村では、石炭ストーブか、薪を燃やす暖房器具を使っているが、これが大量の燃料を消費する。中には、毎年100立方メートルを燃やす世帯もあるため、薪の供給には細心の注意が払われている。

緊急時には、凍りついた自動車や装置を溶かすためにバーナーが使われる。この極寒の環境下では、バーナーも標準的な装備だ。

衣服も、非常に重要な役割を果たす。裏に毛皮を張ったトナカイ革のブーツや、分厚い獣皮のコートが定番だ。これらの防寒具は、合成素材ではとてもかなわないほど断熱性能が高い。また、複数のアイテムを重ね着するのも、防寒のカギだ。

この地の食生活も、この気候で要求される条件を反映している。凍った魚、トナカイの肉、馬の肝などの食材が使われることが多く、タンパク質と脂肪分が豊富な食事となっている。寒さと絶えまなく戦う身体に燃料を供給できるよう、カロリー密度が高い食材だ。

社会構造も、寒さに対応している。生き延びるためには、共同作業での除雪から、「暖房が付いたガレージなどのリソースを共有すること」まで、地域共同体全体での取り組みが不可欠だ。

なお、この村の学校は、気温が摂氏マイナス52度を下回らない限り、休校にはならない。

これほどの過酷な気象条件のなかでも、人は生き続けている。

オイミャコンでの暮らしは、人間が持つ逆境への適応力と回復力を実証している。傍目から見ると、オイミャコンの寒さは、克服など不可能のようにも思える。しかし、ここを我が家と呼ぶ人たちにとっては、過酷で美しく、常に自然環境との「ダンス」を余儀なくされるこの生活こそが日常なのだ。

というわけで、我々の多くが大寒波への対応に苦労する一方で、オイミャコンに住む人々は、大自然が与える最も過酷な試練を耐え、適応し、さらには繁栄するという、人類の信じがたいほどの力を改めて教えてくれている。

ヤクート馬(Shutterstock.com)

ヤクート馬(Shutterstock.com)

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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