経営・戦略

2025.01.21 10:00

なぜイーロン・マスクは宇宙事業でジェフ・ベゾスに圧勝しているのか

ジェフ・ベゾスとイーロン・マスク(Getty Images)

ブルーオリジンの元従業員によると、ベゾスは、2021年にアマゾンのCEOを退任した後にブルーオリジンに多くの時間を割くようになった結果、その進展の遅さに不満を抱くようになったという。「彼は、一連の新たな指標を導入しようとしたが、それがうまくいかず、最終的にはCEOを解雇した」と、その元従業員は、匿名を条件にフォーブスに語った。

ブルーオリジンは現在、昨年アマゾンから移籍した新CEOのデイブ・リンプの指揮下でニューグレンの初打ち上げを成功させたのに続いて、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)のロケット、ヴァルカンでも使用される強力なBE-4エンジンの生産を加速させている。

同社は、100基以上のBE-4エンジンを年内に製造予定の製造施設を整備しており、年間12回の打ち上げを支える複数のブースターも準備している。

スペースXの独占を打ち破るベゾス

宇宙業界は、ブルーオリジンが成功を収め、衛星や観測機器などのペイロード打ち上げ分野におけるスペースXの事実上の独占状態を、同社が打ち破ることを期待している。ニューグレンロケットの搭載能力は、ファルコン9の約2倍で、衛星1基当たりの打ち上げコストを大幅に引き下げることが可能だと元社員はフォーブスに語った。

しかし、スペースXは大型ロケットのスターシップの試験を進めている。全長約120メートルのこの次世代ロケットは、衛星インターネット事業であるスターリンクの展開を加速させる見通しで、投資家の大きな期待を集めている。

「マスクは早い段階で、ロケット事業よりもインターネット事業の方が収益性が高いことに気づいていた」と関係筋は述べている。

モルガン・スタンレーのアナリストによると、スペースXは昨年142億ドル(約2兆2000億円)の収益を上げたが、その65%がスターリンクからのものだと推定されている。また、同社は、2030年にはスターリンクだけで480億ドル(約7兆4900億円)の収益を上げると予測されている。

一方、ブルーオリジンの事業見通しは、それよりもやや不明瞭ではあるが、同社は、スターリンクを除く主要な衛星コンステレーションの契約を獲得しており、その中には、宇宙から通信サービスを提供するネットワークを開発中の、テキサス州を拠点とするASTモバイルが含まれる。ベゾスのアマゾンも、自社の衛星コンステレーションであるKuiper(カイパー)の実用化に向けて、ブルーオリジンを活用している。

また、米国政府は、国家安全保障衛星の打ち上げでブルーオリジンを利用したいと考えており、NASAも過去3年間で月面着陸船の開発に34億ドル(約5300億円)、商業用宇宙ステーションの開発に1億7200万ドル(約268億円)をブルーオリジンに支払った。

ベゾスの究極の目標は、ブルーオリジンを利用して宇宙エコノミーを創出し、製造業を地球の外に移し、地球の環境を回復させることだという。

「私は、ベゾスにはそれを収益化するビジョンがあると確信している。しかし、具体的にそれが何なのかは分からない」と関係筋はフォーブスに語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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