経営・戦略

2025.01.21 10:00

なぜイーロン・マスクは宇宙事業でジェフ・ベゾスに圧勝しているのか

ジェフ・ベゾスとイーロン・マスク(Getty Images)

ジェフ・ベゾスとイーロン・マスク(Getty Images)

ドナルド・トランプが1月20日に第47代の米国大統領に返り咲くにあたり、イーロン・マスクとジェフ・ベゾスは、選ばれた要人として就任式に集う予定だ。しかし、2人の宇宙開発競争における進展を見てみると、ベゾスのブルーオリジンは、マスクのスペースXに大きく遅れをとっている。

ブルーオリジンは16日、ベゾスが私財を投じて2000年に設立してから約25年を経て、初めて「ニューグレン」と呼ばれるロケットを宇宙へ打ち上げた。一方、マスクが2002年に設立したスペースXは、わずか6年でファルコン1を地球周回軌道に乗せていた。同社は昨年、133回の打ち上げを成功させ、合計145回の米国におけるロケット打ち上げの大半を占め、世界全体の263回のうちの半分以上を占めていた。

両者の宇宙開発におけるアプローチの違いは、資金調達の方法からも見て取れる。ベゾスは、最近まで自己資金のみでブルーオリジンを支えており、慎重な姿勢でロケット技術を開発した。一方、限られた資金でスタートしたマスクは、シリコンバレー流の「速く失敗してそこから学ぶ」というアプローチを採用した。

宇宙分野の調査企業、クイルティ・スペースのケイレブ・クイルティは次のように語る。「スペースXのエンジニアは非常にハードに働くため、燃え尽きてしまう場合もある。一方、ブルーオリジンは、より安定した労働環境を社員に与えているが、ここ数年で、そこから生じる課題が見えてきた」

ブルーオリジンにベゾスが投じた額は累計146億ドル(約2兆3000億円)と推定されている。一方、マスクは、スペースX初期のロケットであるファルコン1の開発にわずか1億ドル(約200億円)を投入したとされる。

しかし、マスクは、米国防総省やNASAとの打ち上げ契約から強力な後押しを受けてきた。NASAは2006年に同社に2億7800万ドル(約434億円)を与えて、その後の同社の主力ロケットとなったファルコン9の開発を支援した。NASAはまた、2008年に国際宇宙ステーション(ISS)に貨物を輸送するための16億ドル(約2500億円)の契約をスペースXに与えていた

政府との大規模な契約で評判を高めたスペースXは、民間顧客や外部の投資家を引き付けた。同社は、これまで少なくとも95億ドル(約1兆4800億円)を調達しており、その結果、マスクの持株比率は42%に低下した。しかし、スペースXの評価額は、昨年12月時点で3500億ドル(約54兆7000億円)という驚異的なレベルに達しており、マスクの持ち分の価値も1470億ドル(約23兆円)に上昇した。

両者のアプローチの違い

マスクとベゾスは、両者とも再利用可能なロケットで宇宙への到達コストを引き下げるという目標を持っているが、スペースXが急激なペースで開発を進めたのに対し、ブルーオリジンは、段階的かつ慎重なアプローチを取ってきた。

スペースXが、打ち上げのペースを加速させ、2017年に18回だったファルコン9の打ち上げを2022年には60回にまで増やした一方で、2020年に初飛行を予定していたブルーオリジンのニューグレンは、遅延が続いていた。

また、ブルーオリジンは2021年にニューシェパードロケットを使用して初の有人サブオービタル飛行を成功させ、宇宙観光サービスを開始したが、スペースXはその1年前にNASAの宇宙飛行士をISSへと運ぶことで先を行っていた(ただし、ベゾスは自らがニューシェパードに乗って宇宙に向かった点では、マスクの先を行っている。マスクはまだ自分のロケットに乗ったことがない)。
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編集=上田裕資

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