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2025.01.18 15:15

映画「エマニュエル」 70年代のシリーズとはまったく別物の作品

映画「エマニュエル」より© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS

主人公は「夫人」ではなくキャリア女性

原作小説ではタイのバンコクだった物語の舞台は、映画「エマニュエル」で現代の香港に移されている。しかも、主人公は「夫人」ではなく、高級ホテルの現況を査察するためにこの異国の地を訪れたキャリア女性という設定だ。

冒頭は、フランスから香港へと向かう飛行機の機内。初めての男性と化粧室でことを終えて出てきたエマニュエル(ノエミ・メルラン)の行動を一部始終見つめていた乗客がいた。

香港のラグジュアリーなホテルにチェックインしたエマニュエルは、さっそく自らの仕事を開始する。ホテルの支配人であるマーゴ・パーソン(ナオミ・ワッツ)に会うが、彼女は「どうぞ思う存分調べて」とエマニュエルに宣言する。
ホテルに到着した翌日、エマニュエルは支配人のマーゴに会うが © 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS

本国のオーナー企業から査察を依頼されているエマニュエルは、客室やレストラン、バーやプールなど、次々に宿泊施設のスコアを採点していく。設備もサービスも良好で、エマニュエルは最高評価の報告書を提出するが、ホテルの格付けに満足しないオーナーからは、支配人のマーゴを懲戒解雇できるような事実はないかと再調査を命じられる。

仕事に勤しむエマニュエルの前に、香港への機内で彼女の行動を目撃していた男性、ケイ・シノハラ(ウィル・シャープ)が現れる。常連客だが、宿泊者名簿の職業は空欄で、毎回、同じ部屋にチェックインしているものの、夜そこで眠ることはないという謎の人物だ。

シノハラに興味を抱いたエマニュエルは、ラウンジで彼を見かけ、「あなたの職業は? ホテルに泊まらずに何をしているの?」と話しかける。シノハラはこの地でダムの建設に関わっているエンジニアだと告げるが、ホテルで眠らない理由については、答えを濁すのだった。
エマニュエルは謎めいた男性シノハラに興味を抱く© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS

その謎めいたシノハラに導かれるかのように、エマニュエルは遠い異国の地で自己の存在を確かめるかのように、この街のラビリンスに足を踏み入れるのだった。

もちろん新「エマニュエル」にも、過去のシリーズのようなセクシャルな描写は多数含まれているが、それがこの作品のメインのテーマではない。それは、あくまでエマニュエルという女性の自分探しの一手段として描かれていく。
香港という場所でのエマニュエルの彷徨は続く© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - PATHÉ FILMS
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文=稲垣伸寿

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