「日本でも洗練された日本らしいワイン文化を作りたい。このワインショップを、世界最先端のトレンドを扱う、日本における発信基地にしていきたい」と語るのは、店の経営母体となる山仁の大橋健一社長。そのビジョンは、「日本がワインシーンでも世界レベルとなり、尊敬される国になるよう貢献したい」と壮大だ。
大橋氏は、現在、日本在住の日本人として、唯一“マスター・オブ・ワイン”という世界最高峰のワイン学位を有する専門家。パートナーとして一緒に店を手がけるのは、フード&ワインのペアリングの第一人者として知られるワインテイスター・ソムリエの大越基裕氏。2人の頭文字を取って「K×M」と名付けられた。
大越氏について、「突き詰めて考え抜き、丁寧で正確な仕事をする」と厚い信頼を寄せる大橋氏。トッププロ2人のコラボレーション企画とあって、開店以来、世界のワイン生産者や専門家が足を運び、国内外から人が集まる注目の場所となってきている。
世界中のワイン産地を飛び回る日々の大橋氏に、今回、話を聞く機会を得た。
コンポーネントペアリング
「インタートワイン」の特徴の一つが、店内のカウンターで提供する「コンポーネントペアリング」だ。大橋氏が厳選した月替わりの20種の日本酒やワインに、大越氏がピンポイントで合う食材を選ぶ。ただ掛け合わせるだけではなく、正確に要所を合わせることで、お酒も食材も単体で味わう以上になるという、まさに「1+1=2以上」の感動体験を提案する。ワインは世界中、日本酒は日本中のあらゆる産地から選び抜き、体験できるペアリングの価格帯は千円前後から幅広く揃える。カウンターでは、ペアリングの理論や提案方法を理解した“ライブラリアン”と呼ばれる独自の社内資格を突破したソムリエによる解説のもと体験ができる。
ワインは店内で購入できるもので、食材の多くは階下にある麻布台ヒルズマーケット内で入手できるものを選んでいるので、自宅で再現することも可能だ。また、要素(コンポーネント)との相性を提案しているので、そのまま取り入れるだけではなく、これを軸に自分好みに応用し、様々な楽しみを見つけることもできる。
この再現性こそが、2人が大事にしていることだ。その背景には、ペアリングを体験、探求することで、それを気軽に日常に取り入れてもらいたいという想いがある。「自宅で簡単に試せるお酒とフードのMYレシピのヒントをこのカウンターで美味しく体験し、楽しく学んでほしい」と大橋氏。