2. 心に壁を築いて、距離感を保とうとする
過剰な自立心がある人は、他の人から感情的に距離を置けば自分を守ることができる、と思っている。親密な関係であっても、最後には喪失感や胸が張り裂けるような悲しみに至ることがしばしばあるため、愛情が失望に変わるのは不可避だと考えているのだ。彼らに言わせれば、親密な関係には否定的な影響が伴う。人は自分のもとを去り、絆は絶たれ、安心だと思えたことがやがては薄れるので、努力をしても無駄なように思える。
過剰な自立心の持ち主は、こうした事態を避けるために、「楽しいひととき」だけを共有し、苦しみを人に見せない。結局、自分には自分しかいない、と固く信じているのだ。
回避傾向が高い人は得てして、自らの感情を抑え込み、他者と距離を置くことで自立しようとする。2016年に心理学ジャーナルのCurrent Opinion in Psychologyに掲載された研究は、パートナーとの関係で生じるストレスへの反応に、愛着パターンが及ぼす影響を浮き彫りにしている。この研究によると、回避型の愛着傾向をもつ人は、精神的に不安定な幼少期を送ったり、幼いころに欲求を満たしてもらえなかったりしたケースが多く、つらい状況に遭遇するとパートナーと距離を置くことがわかった。
彼らは、親密さを自らの自主性を脅かすものとみなし、弱さを見せるより、自分自身を頼りにする傾向が強くなる。ストレスに対する反応として、自分を守ろうとやっきになり、人に頼るくらいならコントロールを維持しようとするのだ。
このような感情的な隔たりを埋めるためには、「親密な関係を築いても最後には必ず失望させられる」という固い思い込みに立ち向かうことが不可欠だ。では、こうしたマインドセットを見つめ直すのに効果的な方法をいくつか挙げよう。
・思い込みを少しずつ変えていく:まずは、「親密な関係を築いても、最後には必ず傷ついたり裏切られたりする」という考えに向き合おう。ただし、すぐに考えを変えようとはせず、相手との関係で感じた前向きなことを毎日、振り返るようにするといい
・週に1回、パートナーとつながる習慣をもつ:毎週必ず、個人的な話や目標、不安などを打ち明ける時間をとって、パートナーと大切な話や弱さを共有しよう。その後、そうやって胸の内を明かして相手とつながったときの感情を振り返るための時間をとろう。親密さや安堵感、感謝など、思いがけない感情を覚えたかどうかに注目すること
・自分を思いやる言葉を書き出す:親密さへの恐怖心や失望がわき上がってきたら、自分への思いやりを実践しよう。自分を安心させるために、「将来的に傷つくことを恐れずに、親密さを楽しんでも大丈夫」とか、「この関係は唯一無二の結びつきであり、昔のパターンを繰り返すとは限らない」といった文章を書き出そう
このようにして恐怖心に立ち向かい、心を少しずつ開いていけば、信頼や結びつきの根幹にある親密さを感じられるようになり、よりバランスがとれて充実した関係が育まれていくだろう。