青井は2005年に丸井グループの社長に就任し、2007年から続いた経営危機を乗り越え、2019年には最高益を記録。その後の躍進の指揮をとってきた。一体、どのようなリーダーシップで社を先導してきたのか。
「いつ潰れてもおかしくない状態が7年ほど続き、その原因を振り返ってみると、端的に言えば業績至上主義になっていたんです。お客様のことや社員の幸せを考えられなくなっていた。ですから僕が社長になった際、まずは企業理念を作りました。それが『お客さまのお役に立つために進化し続ける』と『人の成長=企業の成長』でした。
特に後者はガラリと変えた部分です。企業という場で働く一人一人が成長することでしか、企業は成長できないんじゃないか。言い換えれば、企業というのは人が成長するための『場』であると。個々の成長が実現する『場』にできれば、結果的に社会に受け入れられる企業となり、成長するのではないかという考えに至ったんです」
そのために青井は「立ち止まって考える会」と題し、社員5〜6人のグループとのカジュアルな対話の会を設けた。そこでは社員がいつしか忘れてしまっていたやりがいや夢、お客さまに役に立つことの喜びなどをシェアし合い、互いの共感を育むことで経営理念と社員一人一人が結びつくような組織改革を行なった。
「それから社内のカルチャーが変わっていきました。みんな成功の果実を得たい訳なんですが、果実を得るためにはやはり木が立派に育ち、それを支える土壌が豊かでなければなりません。ただそれには時間がかかる。長期的な視点で粘り強く施策を重ねていく必要があります」
また青井自身は、経営危機の苦しい最中、精神の安定を求めて瞑想やマインドフルネスに出会い、実践を重ねてきた。それが長期的な視点や粘り強さの能力開発に役立ったという。
「瞑想やマインドフルネスの実践は短期的に心が整う効果もありますが、むしろ土を耕して木を育てていくような気の長い修練によって身を結ぶものだと実感しています。実際に瞑想を始めてから、不思議と運が良くなったんですが、それは長く続けていく中でジワジワと効いてきたという感じです。今回の「Zen2.0」のテーマ『大地に坐す』じゃないですが、地面からもう1回見つめ直すような長期的な営みが大切なのだと思います」
ところで慈悲慈愛のリーダーシップは、どのようにすれば身につけられるのか。メンは実際にすぐにでも取り組める簡単なプラクティスを紹介してくれた。