ブダイによって砕かれた粒は非常に細かくなり、まさに「砂」として排泄される。こうしたプロセスは「生物侵食(bioerosion:生物が、岩のような固い基質を削ったり崩したりすること)」と呼ばれる。
1匹のブダイが何百kgもの砂を生み出す
ブダイ科の魚1匹が毎年排泄する砂の量は、数百~数千kgに達する。これらが、太平洋岸の砂浜に見られる白く輝く砂のかなりの部分を占めている。ナンヨウブダイの場合、1匹で1年間に900kg以上の砂を排泄物として排出することもある。一部の科学者は、カリブ海やハワイの砂浜を埋め尽くす砂のうち最大70%が、ブダイ科の魚によって生み出されたものだと推測している。
ブダイ科の魚には、体長わずか12cm強から約150cmまで、さまざまな大きさの種が存在する。また、クイーンパロットフィッシュなどの種には、夜寝る前に口から粘液を出して体を覆い、保護する繭のようなものを作る習性がある。
この粘り気のある繭は、ウツボのような捕食者から自分のにおいを隠すのにも役立つ。さらにこれは、一風変わった警備システムの役割を果たしている。この繭が破られた時には、「逃げなければ」とブダイは察知できるわけだ。
一部の研究では、海藻とともにサンゴ骨格も削り取るブダイ科の魚の食餌行動が、サンゴの減少につながっている可能性を指摘する説も提唱されている。だが、多くのエビデンスは、この説とは異なる実態を示している。実際、これらの魚による生態系への貢献は、決して無視できるものではない。
カンムリブダイが乱獲されている南太平洋などでは、海藻が繁茂しすぎてサンゴが弱る状況が発生している。同じ現象は世界中の多くのサンゴ礁で観測されており、こうした海域ではブダイ科の魚の個体数も減少傾向にあることが多い。
特にカンムリブダイは、浅瀬で群れをなして眠るという習性が災いして簡単に捕獲されてしまうため、非常に危うい状況にある。体長1m以上とブダイ科で最大種のカンムリブダイは、多くの国で食用とされ、需要の高いハタの仲間と偽って販売されている。
こうした影響によって、米領グアムではカンムリブダイが絶滅状態に陥っているほか、ソロモン諸島など他の海域でも個体数が大幅に減少している(カンムリブダイは絶滅危惧種に指定されている)。
(forbes.com 原文)