「ノー」と言うことを恐れる必要がない理由
5つの実験からは、一貫した知見が得られた。私たちは、誘いを断わられた時の招待者のネガティブな反応を大幅に過大評価しているというものだ。言い換えれば、私たちは誘いを断わることを、断わられる側よりもずっと気にしているのだ。このような「考えすぎ」の傾向に、思い当たる節がある人は多いだろう。実は、研究者自身もそうだった。心理学系ニュースサイト「PsyPost」のインタビューで、ギヴィはこの研究の着想を得た個人的経験について語っている。「結婚式に招待されたのだが、行くのがちょっと面倒だった(遠方で、パートナーは出席できないことがわかっていた)」。ためらったが、2人とも欠席すれば新郎新婦は気分を害するだろうと心配し、ギヴィは結婚式に出席した。
「出席しなかったら新郎新婦がどれくらい気分を害するかを、大げさに考えすぎていたかもしれないと思った」とギヴィは認めている。そして研究の結果、ギヴィ自身も多くの人と同じように、自分の判断が及ぼす影響を過大評価していたことが裏づけられた。
ギヴィとカークは、ネガティブな結果を過大評価してしまう背景に「認知バイアス」があると考えている。具体的には、自分自身の考えすぎの思考に重きを置きすぎて、それを実際の他者の思考よりも優先させてしまう傾向のことだ。
私たちはしばしば、招待者が「ノー」と言われた事実に固執するのではないかと心配する。だが実際には彼らは、私たちが断わったという事実ではなく、断わった理由に注意を向ける可能性のほうがずっと高い。
こうした知見は、他人を喜ばせることを優先して疲弊してしまいがちな人々にとって朗報だ。ギヴィが説明するように「招待者は、私たちが想像するよりも理解がある」。つまり、たまには誘いを断わって自分のしたいことを優先しても、何の問題もないのだ。
そもそも、自分が声をかける側だったら、誘いを断わられたとしても、相手を尊重するだろう。だから、同じ敬意を自分にも向ければよいだけなのだ。
(forbes.com 原文)