COLUMN|非営利スタートアップと起業家の「新結合」
日本のフィランソロピーや寄付をめぐる全体像から見てみたい。日本ファンドレイジング協会「寄付白書2021」によると、20年における日本の個人寄付総額は1兆2126億円。前回調査(16年)の7756億円からは大きく増加したが、名目GDP比では0.23%となる。一方、寄付市場の大きいアメリカでは、20年における個人寄付が3,241億ドル(46兆6704億円、1ドル144円計算)にのぼり、名目GDP比1.55%。イギリスでも、18年における個人寄付は101億ポンド(1兆8584億円、1ポンド184円計算)で、名目GDP比0.47%だ。日本はまだまだ伸び代があるといえる。また、主要国の助成財団数を比較しても、米国が8万団体を超え、ドイツが2万団体を上回るのに対し、日本では約3000団体にとどまっている。ただ、『Forbes JAPAN』2022年5月号「新しいお金の使い方」特集で、注目したような「起業家によるフィランソロピーの動き」のような新潮流も生まれている。メルカリ取締役兼代表執行役CEO(社長)・山田進太郎による、女性の理系進学を推進する「山田進太郎D&I財団」、コロプラ代表取締役会長・馬場功淳による、クリエイター支援の「クマ財団」、MIXI取締役ファウンダーの笠原健治による、貧困家庭や子育て負担を支援する「みてね基金」などがその象徴だ。
Speee取締役ファウンダーの久田哲史による「Soil」もそのひとつだ。「もうからないけど意義がある」取り組みを行う「非営利スタートアップ」の創業期に事業助成(寄付)を行う。「Soil/Forbes JAPAN基金」プロジェクトでは5人の起業家の資金を原資に、さまざまな社会課題解決に挑んでいる非営利スタートアップ5組織に事業助成を行った。審査会等をはじめ、多様で、かつ、複雑な社会課題解決に挑む非営利スタートアップと起業家が出合う機会がつくられた。
こうした動きがムーブメントとして拡張していくことで、若手富裕層における社会貢献の資金提供が「教育」や「アート」への関心が高いのに対して、新たな回路を拓く機会にもなるかもしれない。非営利スタートアップと起業家の「新結合」が起きることで、どのような社会イノベーションが起きて、どのような社会インパクトが起きていくのか。これからが楽しみだ。