アメリカで最も裕福な女性であるアリス・ウォルトンは先日、自身の過去最大の寄付を報告した。公開された税務申告書によると、アリス・ウォルトンのアート・ブリッジズ財団は、2023年9月30日までの1年間に3億9000万ドル(約561億円)を拠出しており、その中にはアーカンソー州ベントンビルに新設されるアリス・L・ウォルトン医科大学への寄付の2億4900万ドル(約358億円)が含まれている。
フォーブスは、ウォルマート共同創業者のサム・ウォルトン(1992年没)の一人娘であるアリス・ウォルトンが、これまで生涯に合計15億ドル(約2160億円)の寄付を行い、米国で30番目に多くの生涯寄付額を持つ慈善活動家であると推定している。
アリス・L・ウォルトン医科大学は現在、医学生が医師免許を取得するために必要な4年間のMDプログラムの認可取得を目指している。全てが計画通りに進めば、この医科大学は2025年に開校し、最初の48人の生徒を受け入れる予定だ。この学校の施設は、ウォルトン家がこれまでで最も注力してきた慈善プロジェクトのクリスタル・ブリッジズ米国美術館に隣接している。この美術館は昨年、アリス・ウォルトンのアート・ブリッジズ財団から3000万ドル(約43億円)を受け取っていた。
9月30日時点の保有資産が913億ドル(約13兆円)のアリス・ウォルトンは、クリスタル・ブリッジズ美術館の理事長を10年間務め、2021年にその役職を甥のトム・ウォルトンの妻であるオリビア・ウォルトンに引き継いでいた。
ウォルトンの生涯寄付総額は、さらに増加する可能性がある。というのも、彼女は過去10年間でウォルマートの23億ドル(約3313億円)相当の株を寄付しているが、フォーブスはその寄付の宛先を特定できていないからだ。その一部は2022年以降にウォルトン家の財団に寄付された、もしくは、非営利団体に直接寄付された可能性がある。
DAFを通じた寄付
ただし、彼女の寄付の多くはビリオネアがよく利用する寄付金の仕組みであるドナー・アドバイスト・ファンド(DAF)に行き着いた可能性が高い。DAFは、慈善活動用のファンドで、寄付金の使途や金額、寄付先、寄付を行うタイミングなどを寄付者が自分で決められる。DAFはまた、寄付による節税効果を最大化できる点がメリットだが、情報開示の義務がないため、資金の行き先を第三者が確認することができない。フォーブスは、このような理由からビリオネアの寄付の総額からDAFを通じた寄付を除外している(ただし、寄付金の使途の詳細を確認できた場合を除く)。ウォルトンの代理人はこの記事へのコメントを控えた。
いずれにせよ、アリス・ウォルトンの個人としての慈善活動は、まだ始まったばかりのようだ。
「ここ数年、私は芸術や健康・ウェルビーイングに焦点を当てた新たな財団を立ち上げてきました。私は、これらの財団における理事長の役割により集中して取り組んでいきたいと考えています」と、アリス・ウォルトンは2021年にクリスタル・ブリッジズ美術館の理事長を退任した際のプレスリリースで述べていた。
(forbes.com 原文)