サイエンス

2024.10.04 14:00

カップルの関係改善に役立つ「自己認識力」、3つのポイント

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パートナーと喧嘩をしているさなかに、どうして同じ問題で何度も揉めるのか、ささいな会話で誤解が生じるのはなぜなのか、と思うのはよくあることだろう。自分を正当化しようとして相手に責任を押し付けたり、厄介な会話をすべて避けたりしている人もいるかもしれない。

未解決の食い違いがあると、時間の経過とともに、それらが積もりに積もって、お互いに共感できなくなり、パートナーとのあいだの溝は深まっていく。そして、「自分はなぜ以前のように幸せではないのか? 何がいけないのか?」と疑問を抱くようになるかもしれない。

こうした疑問に対する答えは、相手ではなく自分の内面にあることが多い。自分の感情やニーズ、行動を真に理解できずにいれば、それを相手にうまく伝えることや、パートナーに共感することなど、ほぼ不可能だ。自分を十分に認識できていないと、パートナーとの絆や、充実した結婚生活を阻む、目に見えない壁ができてしまう。

組織心理学を研究し、企業幹部向けコーチでもあるターシャ・ユーリック博士は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に寄稿した記事のなかで、「ほとんどの人が、自分は自らを把握していると信じているものの、我々の研究対象者で実際に条件を満たしているのは、わずか10%から15%であった」と述べている。つまり、自分は自分のことをちゃんとわかっていると自信があっても、思っているほどわかっていない可能性は高い。

パートナーとの関係を変える上で、自己認識が土台となる理由と、自己認識を積極的に育むべき理由を、3つのポイントから説明しよう。

1. 個人的成長とパートナーシップのバランス

自己認識とは、自分について明確に認識する能力であり、内的視点と外的視点の両方が必要だ。内面的自己認識とは、自らの感情や信念、価値観、目標を把握していることだ。一方、外面的自己認識は、他の人が、自分と自分の行動をどう見ているかに関する理解だ。

自己認識には、自分自身の強さと弱さを認める自己洞察と、自分が相手によって異なる役割を果たしていることを反映した自己同一性が含まれている。これらが一体化することで、自分がどんな人間で、世界とどうかかわっているのかを、人は総合的に理解する。

自己認識によって個人が成長するのは、対人関係で自分が否定的なパターンを繰り返していることを自覚できたときだ。人は、いともたやすく、無益なサイクルに陥ってしまう。しかし、自分自身を見つめ直せば、そうした無益な行動パターンを繰り返していることを認め、改善に向けて努力できる。

人との関係における自らの弱さや欠点を理解していない場合、パートナーと揉めると、つい本能的に、相手に責任を転嫁してしまいがちだ。これに対して、自己認識できていれば、自らの内面に目を向け、「この問題における自分の落ち度とは何か」「改善に向けて自分にできることはあるか」と自問自答できる。このようにして自らの内面を振り返ることで、非難の応酬は断ち切られ、個人的に成長できる機会が生まれやすくなる。

個々人が自己認識できていると、揉めごとが繰り返されるパターンが解消され、もっと健全でバランスの取れた人間関係を育める確率が高まる。また、自分自身とパートナーのニーズに応じようとする姿勢が強くなるにつれ、互いへの理解も深まるので、両者にとってバランスよく充実した関係が育まれやすくなる。

2. 自己認識は真のコミュニケーションを促す

自己認識は、コミュニケーションを向上させる上で極めて重要な役割を果たしている。各自が自分自身の意見や考えを明確に述べることで、誤解が生じにくくなるからだ。自らを深く理解していると、パートナーとの関係に対して、現実的な期待を抱けるようになる。

例えば、仕事量があまりにも多くて怒りっぽくなっていると自覚しているときは、パートナーに対して、こう伝えることができる。「自分は、仕事が大変すぎると、ストレスが溜まって怒りっぽくなってしまう。冷たい態度をとっているように思えるかもしれないが、私たちの関係のせいではない。息抜きの時間が必要なだけなのだ」

このように自己認識できていれば、思いや考えを率直に伝えられるので、パートナーは感情を理解し、共感を示せるようになる。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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